2020年。

東京オリンピックが決まったときに長女と必ず見に行こうと約束した、その年がやってきました。幸い、一番見たかった競技のチケットを入手でき、ホテルも何とか確保できたので、すでにかなり痛い出費があり、否が応でもオリンピックがすぐそこなのだと痛感しております。

 

2019年、私自身の目標は色々な意味で「ダイエット」だったのですが、大きく挫折しました。仕事も、身も。甘い、甘い1年でした。一方、娘たちは着実に結果を出していきました。2回目の全国大会で念願の初勝利だけでなく、3回戦まで勝ち進んだ次女。長年の目標だった全国大会の切符を手に入れた長女。初めて通った塾で新人賞なるものを手にし、これから文武両道を進み始める長女です。娘たちとの関係では、教えることの量と教わることの量が逆転しました。

 

 

2020年は、まだ目標が定まっていません。2019年があまりに不甲斐ない1年で、反省する力も残っていなかったというのが正直なところなので、2020年は一歩ずつ。もちろん、チーム全体では、リーガルテックも利用しながらコモディティ業務を減らし、新しいことにチャレンジすることを志向していきますが、自分自身の法務ウェイトが低かったこの数年に落としてしまったいろいろなことを一つひとつ取り戻していく1年にしたいと思います。

 

 

こうして夜中にブログを書くことからも久しく離れていました。夜中や早朝、PCに向かうとき、いつも相棒が傍で見守ってくれていたのですが、その柔らかくふわふわした存在に触れられなくなってから、この時間が苦痛になってしまったように思います。

1年経ち、ふわふわの盟友はドーナツの穴になりつつあります。目の前にはいないけれど、そのいないという事実が自分の中心を形作ってくれているような。この数年、近しい人との別れが続き、欠落感とともに過ごしている感覚があります。これが大人になるということなんでしょうか。

 

 

思えば、結果を出し続けた娘たちも、悔し涙を何度も流しています。40歳になったとき、不格好な10年にするんだと決意してから、もう数年が過ぎてしまいました。 

さて、新しい1年は、不格好に悔し涙を流すためのスタートラインに立とうかな。足をもつれさせながらも、懸命に走る娘たちを追いかけていこう。

 

 

法務チームでOKRをやってみた。

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12月にお借りしたい、猫の手。

 放置しまくっていたブログを今さら開くのもなんだかなぁ…と思っていたところに裏legalACなるものができ、裏ならばということで、裏 法務系 Advent Calendar 2019 - Adventar、ひと枠お邪魔いたします。

 昨晩、次女の主張でハンバーグが見送りになり、ハンバーグ画像を諦めた矢先、ゆかぺさんからのバトンで美しき猫の手の写真を載せることができ、もう2019年の仕事を終えた気分です。

 

さて、あまりに久々の更新なので、まずはちょっと自己紹介をいたしますと、一人法務として地方のメーカーに入社、取引法務をメインに、その後なんとかチームと言えるプチ法務になりました。この数年は人事やコーポレート法務もかじりつつ、総務・人事・法務のマネージャー的な仕事をしています。

この数年、人事業務のウェイトが高くなり、特に最近は人事制度の見直しも行っていました。そのような中で、目標管理に関し「OKR」を法務でも試してみることになりました。Googlefacebook、日本であればメルカリが導入したということで、ちょっと流行っぽくなっている「OKR」ですが、流行りに乗ってOKRを導入したというわけではなく、長い長い自社分析ののちに、導入することになりました。これを書くと人事ブログになってしまうので、今回は法務への適用をメインに。

 

OKR?

OKR(Objectives & Key Results)って何だっけ?という方のために、すでにあちこちにて記事になっていますが(たとえばこちら)、従来よくあるMBOとの違いは以下のようにまとめられます。

  • 挑戦的な内容を設定 ≠現実的・保守的な内容
  • 70%程度の達成でOK →100%達成しなくてもOK=失敗が許される
  • 設定頻度は短期間(3か月)
  • 毎週、進捗を管理し、フィードバック
  • 全社に公開

 

法務と目標

法務って、目標を立てること、難しくありませんか?法務に限らず、管理部門はみなその側面があるとは思いますが、明確な売上や新製品のリリースという可視化される実績がない、または実績を作りにくい。

で、私の場合はどちらかというと、積み上げでした。*1 自分の身の周り(近似発生したトラブル対応や相談が増えた類型等)と、想像しうる範囲の近未来(法改正や事業の拡大エリア等)をベースに、“何ができるか?”・“何をしなくてはいけないか?”から目標を立て、普段のサバキ仕事(≒相談案件)の合間に、シカケ仕事(≒企画・提案テーマ)を挟んでいくというように日々が回っていたと言えます。とはいえ、このやり方では、忙しい日々に、さらに仕事を“下ろす”ことになり、メンバーが疲弊する。いつの間にか目標を立てることすらままならなくなっていました。

 

 OKRを試してみた

その後、法務チームでワークショップをしたり、ありたい法務像を言語化したりするなど色々と試してみたのですが、どれも今一つうまくいかないところに人事制度改定の話が進み、OKRを試してみることになりました。

 

<OKRの設定ステップ>

  • 自分たちがありたいチーム像(O=Objective)を定性的に言語化する
  • その状態になりうる仮説を立て、それを実現する指標(KR=Key Result)を3つ設定する。

 新しい事業年度が始まるとき、目標はすでに立てているものだとは思いますが、設定に時間をかけ、第2四半期に入ってようやく実行開始となりました。特にObjective設定に時間を要し、「O」を見たら「ああ、あの会社の法務チームだね」とわかるレベルになるまで自分たちの言葉で表現するということを徹底しました。

OKRを進めるにあたっては、他部署から自分たちが立てたObjectiveに率直なフィードバックをたくさんもらいながら、つまり、かなりのダメ出しをされながら、反論したい思いをぐっと飲み込み、ダメだしを受け入れ、さらにメンバー全員で言葉を磨いていくという2か月でした。

結果、私たちのチームが目指す情景がありありと浮かぶ、唯一無二のObjectiveが表現できたのではないかと思っています。何といいますか、チームの中から“削り出した”という感覚があります。 若いメンバーも、みんなと向かっている方向が一緒だとわかってほっとしたようです。その様子を見て、私自身も本当に、ほっとしました。“情景がありありと浮かぶ”ということが、今後の実行段階で「目指す状態に近づいているのか?」という問いをチームに生むことになるので、これが何より大事だと思います。

 

Objectiveが定まったら、それを実現するための流れを考えます。これはいわば、法務戦略を立てるということです。いつもの延長線上だと、「●●法改正に対応しないと。」、「できればそれを契機としてセミナーもやろう。」、「改正内容から、新サービスを考えられないかな。」という感じで、自分たちなりには結構考えているつもりで話していたのですが、あくまでもソリューションありきの単発の発想でした。そうではなく、目指す状態(Objective)に近づくために、どんな因果が回ればよいのか、そのためにこれが達成したら回ったと言えるのではないかという指標(KR)を考えます。ここでのポイントは、自分たちの従来の前提を一旦保留し、「やるべきだ」と思っていることを横に置いて、“本当に成果が出ることは何だ?”と問い続けることです。ここで「やるべき」に囚われると、従来のMBOと大差のないものになるように感じました。

 

最終的に立てた指標は、非常に既視感のある内容でした。チーム全体の品質を保ちながら時間を短縮する施策を実行すること。サバク時間をシカケル時間に振り替えること。既存ルールの枠を超える提案を行うこと。*2ただ、思いつきで3つを抽出したわけではなく、目指したい状態を想像しながら、単発ではない、相互に関連した指標を総合的に全員で追いかけるので、自分たちで決めた指標が従来とそう変わりのないものであっても、チームにとっては、非常に新しいと感じることのできる内容でした。

 

始めてみて 

まだOKR実行後数か月しか経っていませんが、チーム内で明らかに変化が見られ始めました。 

 

メンバーの時間の使い方が変わった

マネージャーならば「主体的に動いてほしい」ということ、口にしたことがあるのではないかなと思います。でも、「主体的に動け」って、すでに主体的ではない。私自身も、メンバーを励ましたり、厳しくしたりしながら、どうにか自主的に動くようにと試行錯誤してきた数年でした。が、OKRが始まってから、メンバー全員が自らシカケるための仕事の時間を自然と作り始めました。

それでも、相談に忙殺され始めるとまた元の忙しいだけの日々に戻るので、「それって、近づくための時間になってる?」と声をかけると、メンバー本人の中で、問いが駆動するようです。

 

チームの課題が見えてきた

Objectiveに近づくためのTaskを実行しようと思うと、日常業務に追われていては、着手すらできない。実行し始めて、2週間ほどですぐに気づきます。何に時間がかかっているのか、どこに悩みがあって進まないのか、今までのやり方をどう変えたらよいのか、時短のために使えるツールやリソースはないのか。

リーガルテック、いくつもデモを受けた後、採用したものがなかったけれど、とにかくいくつかのサービスを試して、1分でも捻出しよう!という方向に舵を切りました。

 

視座が自然と上がってきた

どうしたら、“効く”・“インパクトを生む”法務チームになるのか?とみんなで考えると、上述の通り少ないリソースをやたら思いつきの施策で奪う訳にはいかない。自社の事業構造のカギはなんだ、この事業のキモはなんだ、この契約の核は…、視座が自然と上がっていきました。若いメンバーも含め、チーム全員で一緒に偉い人に話を聞きに行くことはこれまでになかったことで、何とかもっと本質的に、俯瞰的に捉えようという行動に変化しています。

 

アウトプットにこだわり始める

毎週、Objective実現に向けた進捗を確認するので、アウトプットがないと、非常に物足りない思いが生まれます。今まで手を付けてこなかったテーマについてもとにかくアウトプットしよう、ベータ版をリリースしよう、とにかく出そう、出すからには短時間でも濃縮してインプットしよう、となっていきました。

日々の契約レビューの回答もアウトプットの一つであることに違いはないけれど、ありたい状態を自らの中から削り出し、その状態に近づこうというマインドになったメンバーにとっては、“それだけでは、違う”という感覚が短期間でも染みついているようです。

 

 

と、まぁ、よいこと尽くしのようには見えますが、やっぱりしんどい思いもあります。高みを目指すと息切れもする。そして、70%の達成でOKと言いながら、現時点では遠く及びません。設定値が高かったのか、やり方がまずいのか。そもそも、立てた仮説が誤りだったのか。3か月という期間を終えたところで、仮説の検証に入る予定です。

法務の方々、勝手なイメージですが、こうありたい、誰かのためにこの価値を実現したいという思いが強い方が多いのではないかと感じでいます。とすれば、高みをいかなる戦略で実現するか?という思考になるOKRはなかなか合うのではないかなと思った半年でした。

実例を具体的に載せられたらもっと伝わるんだろうなと思うのですが…。抽象だけでは、今一つ伝わりにくいですよね。地方におりますが、法務のみなさま大歓迎です。懇親会が主目的の、一人法務やプチ法務たちが集まる勉強会を時折やっておりますので、ぜひ遊びに来てください。表(裏だけど)には書けない話も、是非ぜひ。

 

 

では、Subaru.Tさんに、バトン(猫の手)をお渡しいたします。これで、猫の手も借りたい12月にはならないはずです!

 

*1:数年前のエントリではこんなことを書いておりました。

*2:実際には、3つともに数値を設定しています。

法務の「ミカタ」

#裏LegalACに参加しようかと思ったら、ブログを放置しすぎて、はてなダイアリーからはてなブログに移行していることの確認からドタバタいたしました。ということで、ちゃんと更新できるのかのチェックのためのライトエントリです。

詳しくは後日エントリで触れようかと思いますが、現在、法務チームでは、従来のやり方を一から見直しています。その中で、いわゆる「ハマリ案件」(炎上案件ともいう)が増加傾向にあるということがわかりました。元々、自分たちのチームは定型契約があまり多くなく、都度スキームを書きながら必要な契約を探る業務が多いとは自認しているのですが、社内でこじれるケースが増えつつある。ただ、自らはまっていることも多いように思える。

 

メンバーと話をしていると、一生懸命契約書を読んでいるけど、そもそも契約がなぜ必要なのか、もしかすると不要ではないかということを疑うことを忘れてしまって手戻りが発生するケースもある。メンバーによって、相談案件・発生案件に対する「見方」にレベル差が大きく、先輩社員と若手社員でもかみ合わないこともあり、相談を受けたときに、何を、どんなふうに「みる」のかに起因するのではないかと、最近思うのであります。

 

 案件全体を「見る」「診る」

私自身は、相談のスタートはここです。大概、相談のスタートは契約書なのですが、メーカーなので、企画・調達から販売・アフターサービスまでの案件全体像を踏まえた契約の位置づけを確認することが初動です。以前にも本ブログに記載したことはあるのですが、タテ(時間)とヨコ(関係する当事者・モノ・権利・情報等の案件に必要なパーツ)を見る。そして、アキレス腱になりそうなところを「診る」。

相談以外の契約や法令上の要対応事項、社内で決定・決裁が必要なポイントなどを洗い出し、同時に”要らない契約”も抽出します。契約相談にそのまま応えない、という回答はこの「診る」から生まれてくる。

 

事業を「見る」(「視る」)

相談された案件が、既存事業の一つの案件なのか、既存事業から少しはみ出た事業なのか、まったくの新規事業なのか。そして、結局は、儲かるのか、否か。法律や契約の条件は見るけれど、儲かるのかについては法務の範囲外として、口を出しちゃいけないと遠慮してきたような気もしますが、わからないなりにも考える。競争優位性はあるのか、どのくらいの利益を見込み、どのくらいのボリュームなのか。どれくらいのスパンを見越しているのか。時期は適切か。法務である前に、同じ会社の社員なので。ここは、法務をバックグラウンドにしつつ、経営の数字や戦略を目下勉強中ではあります。まだ“事業”というレベルで捉える経験値が低いので、個人的には、案件全体を見た次に、事業を見る(儲かるのかをシビアに視る)というのが現状です。

事業上のリスクを相談者にそのまま回答することもあれば、取締役に報告・相談するという形でのアクションをとることもありますね。

 

契約書を「見る」「観る」

で、そのうえで初めて契約書を見ます。契約書に飛びついた後に抽象に戻る=具体にどっぶりは待った後に視座を上げるということが、個人的にはあまりうまくいかない。

見方としては、まずは眺める感覚で、細部には入らず「見る」。そのうえで、案件全体像と比較しながら、カギになりそうな条項の仮説を立てつつ、契約書の細部まで、集中して「観る」。

 

 

社員を「看る」「診る」

法務という仕事を通じて、顧客に価値を提供するという目的のために、大事なのがこれでないかなと思うのです。相談してくれる社員は、残念ながら丸投げの場合もあるけれど、本当に悩んでいたり困っていたりすることの方が多い。

特に、法令違反かも…と思って相談してくるときには、みんな不安そうな顔をしている。違反してしまった場合はもちろん、製品のリリース直前で製品表示にミスが発見されたとき。「違反なので、NGですね」というのは簡単だけど、「そうか、リリース直前で悔しいね。やれること、何とか一緒に考えよう。」と、まずは絆創膏を貼らないと。社員を通じて、製品を通じて、価値を提供するとしたら、社員との関係性の質を高めないと、法務が提供できる成果は上がらないわけで。単に依頼内容にそのまま応じるということではなく、厳しいことも言える関係を構築して、その社員の数年先と製品のEOLまで寄り添うということを目指したいものです。

 

ハマる案件というのは、契約を観る/案件を見る・診る/ 事業を見る・視る/という見極めができていないことに基づくのではないかと思うこの頃。通常商流の通常製品の販売なのにやたらスキーム検討に時間をかけて回答が遅くては、相談する方もげんなりする。

通常の相談との差異が大きい、すなわち各要素においてイレギュラー度が高いほど、契約だけでなく、案件全体や事業全体をみにいく。逆にレギュラー相談は契約書だけを見ることでもOK。

 

現在、チーム内で相談の対応方法を再検討中であり、今後は以下のようにするつもりです。

  • 契約を「みる」→1次担当+上位者の2次チェック
  • 案件を「みる」→2人で共同対応
  • 事業を「みる」→法務チーム全体での対応*1

これまでは相談の難易度で担当者を変えてきたけれど、それだとチーム全体として成長できていないことが判明しました。先輩が後輩にノウハウとして説明する、チーム内で一問一答が飛び交うのではなく、先輩が複雑案件で悩む横で後輩も一緒に悩むことで、肌感覚を育てていこうかなというところ。

 

 

解像度をしなやかに変え、抽象と具体を行き来しながら相談を起点とする成果の上げ方を探ること。これをどう実現していくか、ここも若手に向けて言語化していかないといけないなと、あらためて思うのでありました。

 

薄っぺらなエントリですが、リハビリエントリということで。

 

 

 

 

*1:といっても、プチ法務なので5人程度ですが。

盟友に捧ぐ。

2018年12月6日、愛猫が息を引き取りました。彼女とは17年以上、共に過ごしてきました。
先代の黒猫が急逝してからずっと肩を落としていた私のもとへ、彼女はやってきました。彼女が15歳を超えたあたりから、毎年毎年、1年でもともに過ごせますようにと思いながら、毎年4月の彼女の誕生日を待ち焦がれていました。あぁ、今年も一つ歳を重ねられたね、来年の誕生日も一緒にいようねと思いながら、2019年の4月を待っていましたが、それは叶いませんでした。


どうしてなのかは、何度考えてもわからないのですが、私の人生の岐路には、いつも猫がいます。


就職先を決めたのは、地元に残って先代猫を看取るため。この数年は、会社を休めず愛猫を看取れないくらいなら、会社は辞めても構わないと本気で思っていました。とてもばかばかしいと思いながら、でもどうしてもその思いは拭えないままでした。



親にも、夫にも、娘たちにも見せられない素の自分を、愛猫には見せてきました。
家族であり、伴侶であり、盟友であった彼女。


病名を告げられ、先が想像以上に短いと知ってから、一人になると涙が止まらない毎日でした。ただただ、彼女がいない世界が訪れるのが怖かった。今も、いない世界に慣れてしまうのが怖い。彼女の些細なしぐさを、匂いを、声を忘れてしまう自分が許せない気持ちがある。


そんなとき『猫がいなけりゃ息もできない』という本を知り、彼女との日々を、ちょっとずつ記しておこうと思いました。記す場所としてこのブログが適切なのかわからないけれど、あまり他には思いつかない。



しばし、猫、時々法務という感じのブログになりそうです。

「法務×コンサル」から考える。

2018年の法務系Advent Calendar、始まりましたね。毎年、皆さんのエントリを楽しみにしながら年末進行と格闘しております。今年は、プライベート面でパズルのピースがひとつでもずれたら大崩壊のような日々を過ごしており、穴をあける可能性もあったので参加は見送りました。で、法務色が薄くなった私には、日々のエントリがとても刺激的なので、時間があるお昼休みには、皆さんのエントリを読んで感じたところなどを不定期に呟いていこうかなと思っております。

さて、2日目の「法務×コンサル【法務系Advent Calendar2日目】」を読んで感じたことをちょっと呟いてみます。

法務キャリア7~8年目の頃、通常の依頼案件だけで時間が占められる状況に「これは、何かが大きく違う」と感じ、サバキ仕事だけでは価値がない、事業部より先に、事業部の課題を見つけ、具体的に提案し、Closeまで持っていかねば!と比較的若い私(当時。)が生意気にも事業部の部長を捕まえプレゼンしたことを思い出しました。

その頃、ユーザー対応をしている部署では、ユーザーからの苦情への対応に四苦八苦しており、法務としてもユーザー部門からの依頼は緊急案件として、かつ時間ボリューム的にもかなりのウェイトを割いて対応していました。…が、苦情の対応、さらには提訴をちらつかせている相手に対する対応というのは、精神的に結構来るんですね。年に数件も重大苦情が寄せられると、さすがに「さばく」だけでは対応が追いつきません。かつ、同時に同じ部署のECサイトでも、ユーザー対応に苦慮しておき、これはちゃんと対応が必要だろうと、部長をつかまえたものです。
法務に寄せられる案件の件数推移(法務のリソースのうち、何%をユーザー部門に割いているかも含め)、各案件に共通する特徴と対応、対応スタッフの状態(対応スキル、苦情処理に対する疲弊感等)、市場のユーザーの変化(その頃は、「苦情の2007年問題」などと言われていました)等を踏まえ、今後の解決策として、スタッフレベルの底上げやチームとしてのレベルアップと会社としての方針策定などをまとめ、数年かけて実行していったものです。

↑文章にしてみると、大したことをしていないなぁ…と思いつつ、それでも事業部門の利益に適うことを本気で考え、稚拙ながらも色々とデータや図表をつくって分析し、法務的な観点から問題を構造化するなどして、立場を超えて偉い人に具体的な提言すること、ちょっとドキドキしました。求められてもいないのに一方的に売り込むなんて、当時社内ではほぼ見かける光景ではなかったのです。

近年、私自身が法務だけではなく色々な業務に携わるようになり、コンサルタントの方々のお力をお借りすることも大きく増えました。私が関わったコンサルタントの方は、ちょっと異色で、パワポの成果物を受け取ることはほぼないのですが、“誰よりも、クライアントに寄り添う。結果、誰よりも傷つく。”を体現しており、いつも、その姿勢から、法務パーソンとしての姿勢を考えるきっかけをもらっています。その人に会うときには、いつもちょっと怖いです。でも、どうしても会って話がしたくなる。

最近、法務業務でコンサル的な提案をまったく実行できておりません。パワポが万能ではありませんが、パワポ1枚に凝縮して、その事業部の今と将来を語れるのか?というくらいに、いつもいつも相手に何を渡すのかを考えたいものです。
法務として、“会いたくなるけれど、会うのがちょっと怖い。でも、やっぱり話がしたいよね。”という存在を目指し、事業部や経営層へ全力で片思いをして、結果傷つくということをちょっとでも実現していきたいなと思ったのでありました。


原エントリとはちょっとずれてしまいましたが、「法務×コンサル」というフレーズから色々な思いが浮かぶこととなり、Nakagawaさんに感謝です。

4月4日に思う。

今日から、次女も学童クラブに通います。朝、「がうどうに、いきたくない〜。。」とメソメソしていましたが、今頃、長女とお弁当を食べている頃でしょうか。今日のお弁当は私がメインのおかずをつくり、夫が卵焼きとウインナーを焼き、長女が詰めた、連携プレーの作品です。初めて長女が学童クラブに通う頃の、みんながなんとなく不安を感じていた日(→「新しい1日」)から、チームとして随分月日が流れたのだなと思います。4人と1匹というチームでこの日を迎えられたことに、しみじみと幸せを感じます。


長女は6年生、次女は1年生。人生において、ステージが大きく変わる瞬間は多々あると思いますが、入学するとき、仕事を始めるときがその大きなものではないかと思います。父と保育園に向かい、お友達や先生と、泣き、笑い、母と一緒に帰るという生活から、自分の足で歩く生活への転換です。ときには苛烈に厳しくしながらも、基本的には甘えさせて育ててきた次女なので、少々…いや、かなり心配ですが、この心配を飲み込む力を私自身が身につけないといけないと、あらためて思います。 


一昨日、会社でも入社式を迎えました。一番若い社員は、随分長女の歳に近づいてきました。入社の日、それは、人事も扱う身としては、親御さんからバトンを預かり、長い間背負ってきた荷を降ろしてもらう日でもあると思います。いつか親御さんに出会えるならば、親御さんも知らない、彼女、彼らの素敵なところを100個は語れるように。ド緊張する彼らを思いながら入社式の夜に、思った次第です。



この1年、私自身、どうしようもなく苦しい涙も、嬉しい涙も、たくさんありました。笑顔の裏に大きな悲しみや苦しみを隠している人も多いのだろうと実感しながら過ごしてきました。


できるならば、嬉しい涙を多く流せる人生でありますように。新たな一歩を踏み出す娘を思い、そんな未来を創るために砂粒ほどの貢献ができるように、日々を重ねていきたいものです。

法務出身、総務・人事なんでも屋の悩み 〜相談・通報への対応〜

「法務系AdventCalendar2017」 のエントリです。)


元々取引法務をメインとしていた私ですが、数年間から法務以外の業務も行うようになり、総務・人事業務比率が高まったな…と思ったら、今年は苦手分野のコーポレート系業務も降ってきました。この数年、純・法務業務は政治案件(?)以外、ほぼメンバーに任せているのですが、そのような中で緊急に時間を割かざるを得ないこと、それは内部通報や人事へ寄せられる相談の対応です。
今回のエントリは、人事も所管する、相談・通報窓口担当者の対応の流れのひとつのサンプルとそれに伴う悩みを書いてみました。法務スタッフが通報窓口担当になることも多いだろうと思いますが、人事側から法務の役割も見てみたという感じでしょうか。

1. 相談の種類

相談の種類は単なる人間関係の悩みというか、愚痴のレベルから不正の告発まで様々です。おそらく多くの通報・相談窓口担当の方は、「こんな愚痴のような相談もか…」と思いながらも、その相談の奥に何らかの問題があるのではないかという思いを持ちながら、真摯に対応をされているのではないかと思います。最近の傾向としては、ハラスメント系の相談が増加していると感じています*1

2. 相談の契機

人事も担当するようになって知ったのが、人事から法務に相談する件は、氷山の一角だということ。内部通報窓口への通報であり、法務スタッフも窓口担当であれば、当初から法務の知るところとなりますが、それよりもずっと多いのが非公式な相談・通報です。

  • 内部通報窓口への通報
  • ハラスメント窓口への相談
  • 会社への具申制度を利用した相談
  • 人事担当者への非公式な相談
  • 人事担当のヒアリング時の相談


また、積極的に相談が寄せられなくとも、人事は社員の変化の兆しをデジタルでもアナログでもウォッチしています。変化から声をかけ、何かしらの問題が発覚することもあります。

  • 人事が管理するデータに基づくフラグ 〜時間外勤務の増加、欠勤の増加、その他人事が行う定点観測データ
  • “なんとなく、おかしい”というフラグ 〜口コミ情報。
  • 新入社員、休職明け社員、異動直後社員などなど 〜不安を感じやすい環境にある社員

3. 相談の対応

相談があった場合には、以下のように対応しています。フルコース調査が必要な場合は、当初から法務スタッフにも声をかけることもありますが、より簡易的な場合、特に情報の非公式性が高い場合は、ある程度の調査が終わった段階で追加調査前に念のため声をかけ、懲戒処分を行った場合に処分対象者が納得できずに、または逆に行わなかった場合に通報者が不満を持って、後々トラブルにならないように…というところを一緒に検討します(現状の私の場合、法務も人事もカバーするので、人事と法務で役割の切り分けも何もないのですが)。

  1. 相談内容の把握
  2. 調査チーム編成(利害関係人の排除、調査対象との関係からより“黒子的”に動けるメンバーの選抜等)
  3. 上席への第一報(会社規模により、担当取締役、社長まで様々?)
  4. 初動調査(簡易的な客観データの収集、周辺ヒアリング等。調査の範囲・時期等は相談/通報者に事前告知)
  5. 中間検討(初動調査を踏まえて、弁護士への相談、本人への聴取等)
  6. 本格調査(より広範な客観データの収集、周辺ヒアリング)
  7. 追加調査(本人への聴取を受けて、弁明の裏付け調査等)
  8. (結果によっては)懲戒処分(懲罰委員会の開催等)

4. 対応上の悩み

(1)動くと目立つ
「“黒子的”に動けるメンバー」と書きましたが、「法務」のイメージが濃い社員が動くと、目立つものです。ハラスメントの当事者以外に周辺ヒアリングを行おうと思っても、“何か法令違反をしてしまって、呼び出されたのか?”とひやひやさせてしまうことも多々あります。

(2)ヒアリングの難しさ
例えば経費の不正支出の場合には、事実ベースでの確認になりますが、ハラスメントの場合には、いつ、誰が、どんな発言をしたなどの事実のほかに、それを聞いてどう思ったか、自分なら耐えられるか、厳しい発言でもやむを得ない事情があると思うかなどの感情も確認します。事実ベースのときにはメモをとることに抵抗はないですが、感情を聞くときに、せっせとメモをとると話しにくいだろうということで、一通り聞いてから、忘れないうちに一気にまとめるというようにしています。法務に寄せられる、取引の相談事案でヒアリングをするときとは臨む姿勢が違うといいますが、話しやすい雰囲気作りに配慮しながらも、共感しすぎず、ニュートラルを保つ…思いのほか難しいです。
また、ヒアリング協力者から、思わず人間関係上の相談を受けることもあるのですが、「黒か、白か、グレーでも違法に近いか否か…」という発想をしてきた身には、玉虫色というなんともいえない曖昧さを飲み込む力が足りません。グレーはまだ単色なので扱いやすい。複数人の様々な感情が混ざり合う案件は、人間力を問われている気分です。

(3)懲戒処分
懲戒処分を行うこと、ハラスメント関連の場合、明確に法令違反となる不正の場合と異なり、常に悩ましい思いがつきまといながら、進めます。ここで特に、平等性と相当性に悩みます。平等性については社内の過去の懲戒処分との比較をするほかないのですが、懲戒処分の過去件数が多くない場合には少々苦慮します。「処分見送り」ならまだしも、懲戒処分のための会議体にかけることすらも見送られた場合の記録がない場合には比較が難しい。今は、DBを作成し、些細な案件でも「処分検討見送り」の記録を必ず付すようにしました。

(4)担当者の疲弊感
個人のドロドロとした主張を受け続けて、感情に飲み込まれそうになるとき、個人の非常にセンシティブな情報に触れざるを得ないとき、どれだけ主観を排除し、客観的に公平だろうと思われる判断を下しても、禍根を残すことにならざるを得ないとき…これらが続くと窓口担当者の疲弊感が蓄積します。弁護士や法務への相談は、処分の根拠を固めるため、間違いの少ない対応をするため、というリスク管理の観点もありますが、窓口担当者の背負うものを少し軽くするためでもあると最近思うようになりました。なので、弁護士には、簡単にでも、なるべく相談するようにしています。

5. 思うこと

法務として、内部通報窓口に対応するとき、人事から相談されて対応するとき、そのときは「法的な正しさ」を中心に検討することになります。法に抵触するのか否か、後々紛争に発展する可能性は、その場合の勝ち目は、金銭的負担の程度は。
これに対し、人事は処分後の対象者の将来も配慮します*2。企業人にとって懲戒処分は、相当な重みを持つものですが、処分後にリスタートし、本人も周囲も活躍することまでを考える。いわば、処分からのスタート。単に、“再発防止として、ハラスメント研修への出席を指導しました”ではなく、例えばパワハラならばどのようなタイプで発生し(マイクロマネジメント型、叱責型、ネグレクト型…)、処分対象者本人の本来の強みは何で、今後どのようなアクションによって本人が内心から変化するかを考えます。非常に悩ましく、正解のない問いをぐるぐる回す。処分の根拠となること≒正しさを伝えつつも、一方で正しくはないかもしれないけれど、こう考えた…をいかに経営者や本人に伝えるか。この両面を併せ持つことが現在の課題であります。


毎度ながら悩みのつぶやきエントリでした。次は、@legalcatxxx さんですね!

*1:Business Law Journal 2017.3月号の「紛争リスクの高い労務トラブルへの対応」の5社の記事からもハラスメント系の相談が増加していることが垣間見えます。

*2:法務としても、もちろん配慮するでしょうが、求められていることはやはり違うかと。