法務マネージャーのお仕事って。

法務系Advent Calendarが始まり、11日目です。毎日皆さんのエントリを読みながら、かなり早い時期に「しまった。レベルが高すぎる・・・。」と感じたCaracalです。が、おそらく広く多様性に富んだ法務パーソンに参加してもらうことも狙いの一つではないかと勝手に解釈し、来年のAdvent Calendarへの参加ハードルをぐっと下げようと、当ブログのいつも通りのつぶやき的エントリを登録いたします。
さて、2014年はブログを放置していました。今年は本当に、息が切れました・・・。ここには書くことのできない業務上のあれこれが多々あったのですが、原因の一つは自身の立場が変化したことにもあります。今年の途中からマネージャー見習い的立場になりました。足を踏み入れたばかりの法務マネージャーとしてのお仕事、目下の一番の悩みでもありますので、今感じていることを徒然なるままに。


見習い的立場であり、かつ「学びは自分で」の社風ですので、「さあ、君は今日からこの役割だよ!」と言われることもなく、日々手探りで進めています。役割は大きく 1)目標の策定および実行管理、2)具体的案件の判断(決裁)、3)メンバーの評価と育成、4)予算管理、5)その他諸々といったところに分かれるのかなと思い、それぞれについてこの数ヶ月の感じたところを。

目標の策定および実行管理

(1) 足元の課題の管理
一人法務として活動を始めたときから、一定期間ごとに処理した案件の傾向と分析を行い、次の期中における重点取組事項を抽出しています。Googleスプレッドシートで、1次担当、2次担当、相談類型(スキーム相談/契約相談/法令相談/係争/その他)、相談概要、改善事項およびその優先度と着手状況を案件ごとにまとめています。改善事項は多数の案件をさばく中で熱いうちに類似案件に備えての予防策等をごく簡単にメモしておき、「急がないけど大切なコト」を可視化し、一定期間ごとにTaskへの格上げを判断するようにしています。
(2) 周辺環境における課題管理
近いうちに予定されている法改正、他社における不祥事例等の情報を収集し、自社事業との関係度、優先度から次期課題に反映させています。
(3) 自社の将来の事業領域
近未来への備えとして、自社が進むべき領域の法制度や新スキームの提案などを提案していく必要があると、この数ヶ月で初めて実感として持ちました。
以前に「ビジネス法務」に掲載されていた記事(後ほど追記します→ビジネス法務2013年12月号 P.18「法務部の存在意義を高める年間計画」)において(3)の視点*1を得たものの、その実現にはなかなか至っていませんでしたが、管理職会議に参加するようになって初めてイメージが湧きました。開発部門の、営業部門の、購買部門の、それぞれの方針・施策を直接、時間をかけて聞くことにより、会議中にリアルタイムに法務業務に引き寄せて自分のキーワードに変換することができ、かつ細部のニュアンスを掴むことができるため具体的なアンテナを立てやすくなりました。上司経由で文字として知るそれとの温度差はかなり大きいものです。

具体的各案件の判断(決裁)

後述しますが、立場が変わるとこれまでの「法務本業」以外に多くの時間を割かねばならないことになり、担当はほぼメンバーに任せポイントの判断のみとなりました。かつ、メンバーが担当した契約レビュー等の判断にかけることのできる時間はぐっと減ります。以前は2次チェックに多くの時間を割き、案件ごとに1次レビュー評価タイムを適宜とっていましたが、短時間で判断を行うために毎朝案件確認mtg.を行い、そこですべて集中判断することになりました。以前から判断の質とスピードの向上を意識してはいましたが、意識ではなく環境から否応なく変えざるを得なくなったという結果です。その結果、これまでは「80点」くらいだったメンバーに求める点数を「60点」にすることにしました。ただ、「60点」と腹を括ってからの方が、メンバーの1次回答の質が上がりました。「任せる」は大きな肥料だと感じるこの頃です。

メンバーの評価・育成

育てる。最も大切であるとわかりつつ、非常に難しいテーマです。ただ、自身の子育て経験からも、そしてある日のTwitter上での皆さまのツイートからも「育てる」という育成者側視点ではなく、「『育ち』を支援する」という被育成者視点での発想がしっくりきています。一人法務からスタートし、法務業務については被育成側に立ったことのない自分自身のスキル全体に懐疑的となると、自分のスキルアップやインプットに目が行きがちです。ただ、管理者としては複数メンバーの伸び幅を増やしチームパワーの総量を上げることが役割ですので、2015年から以下を具体的に実践予定。
(1)スキルカルテ
ハード(法的知識、案件処理能力:契約レビュースキル、ドラフティングスキル、自社事業知識等)およびソフト(依頼者への接客方法、 ヒヤリング能力、ファシリテーション能力、提案実行力等)の両面から、半期ごとにフィードバック。「タイムリーにほめる」とともに、これによりステップアップしている実感を持ってもらえないかと。各社の皆さんはこのあたりきちっと管理されているものなのでしょうか?と投げかけたりしてみます。
(2) 「場」の提供
基礎知識のインプットを増やすための「場」、他社スタッフと切磋琢磨するための「場」。地方企業であるが故のハンデを少しでも埋める環境を提供したいなと。地元法務知財系勉強会にて他社法務スタッフとの交流機会は設定していますが、横連携をさらに強化して基礎スキル共同習得の機会設定を進めてみよう。

予算管理

小規模法務ですので、それほど業務における予算管理のウェイトは大きくありません。研修費用、書籍費用、そして弁護士報酬など。報酬の見積は期初の段階で期中係争対応費用の見込みを立てることが難しいという点が悩ましいですが、ある程度の根拠の基にえいやっと立てるほかなく。

その他諸々

ハブ機能

経営と現場をつなぐ。部署と部署をつなぐ。メンバーと他部署をつなぐ。全社管理職会議に参加するようになってこの「つなぐ」機能のウェイトが案外高いのだと感じました。特に地方企業である当社の場合、東京を中心とした営業拠点と本社が離れていることから、営業起点の案件を進める際に「契約」というツールを通して案件全体のハブになることが主要な機能のひとつになりつつあります。管理職研修等で距離的制約が縮んだときに各営業所長との接点を持つことによってこの機能はより強化されたのではないかと勝手に感じています。
また、私の場合には一人法務から始まったため自分で切り込むしかないという背景があったのですが、真面目な法務スタッフは他部署のエライ人に気軽に聞くということに二の足を踏むことも多々あるようです。管理職会議・研修で距離が縮んだ他部署のエライ人やキーパーソンにつなぐこともこの数ヶ月で一段と増えたように思います。

非・法務機能

大企業の場合は法務として独立した組織だと思いますが、管理部門の中の法務という企業もまだ多いのではないかと思います。私自身の場合、法務業務だけではなく、立場が変わったことにより総務・人事に、経営企画に関することなども少しずつ求められることになりました。また、これまでの取引法務だけでなくコーポレート法務も少しばかりかじることになったり。ああぁ、本業が〜と思うこともありましたが、全社の教育制度を考えることによりコンプライアンス研修のプラットフォーム構築に活かすことができるなど、相互作用を働かせることはできるかなと感じています。




雑然とこの数ヶ月を振り返ってみましたが、以前は法務起点で上を向いて法務として何か経営に貢献できることは…という発想でしたが、経営情報に触れることにより経営課題を法務機能を用いて解決できないか…と天井から穴を開けて覗き込むイメージに変わりました。このイメージを日々のアクションに変換して実践することが2015年の課題です。
あぁ、本当に徒然なるエントリでした(毎度)。「法務マネージャーのお仕事って。」に続く今の自分の言葉は「諸々あるけれど、面白い。」です。今後、その怖さも色々経験するのかもしれません。いつか法務マネージャーの諸先輩方のお話を直接お伺いしたいものです。


2014/12/12 記事について追記しました。

*1:同記事P.21「当社の事業モデルの広がりを把握し、先取りして法的テーマを洗い出すためのアプローチ」に触れてから、このアプローチを常に意識しています。