法務の「ミカタ」

#裏LegalACに参加しようかと思ったら、ブログを放置しすぎて、はてなダイアリーからはてなブログに移行していることの確認からドタバタいたしました。ということで、ちゃんと更新できるのかのチェックのためのライトエントリです。

詳しくは後日エントリで触れようかと思いますが、現在、法務チームでは、従来のやり方を一から見直しています。その中で、いわゆる「ハマリ案件」(炎上案件ともいう)が増加傾向にあるということがわかりました。元々、自分たちのチームは定型契約があまり多くなく、都度スキームを書きながら必要な契約を探る業務が多いとは自認しているのですが、社内でこじれるケースが増えつつある。ただ、自らはまっていることも多いように思える。

 

メンバーと話をしていると、一生懸命契約書を読んでいるけど、そもそも契約がなぜ必要なのか、もしかすると不要ではないかということを疑うことを忘れてしまって手戻りが発生するケースもある。メンバーによって、相談案件・発生案件に対する「見方」にレベル差が大きく、先輩社員と若手社員でもかみ合わないこともあり、相談を受けたときに、何を、どんなふうに「みる」のかに起因するのではないかと、最近思うのであります。

 

 案件全体を「見る」「診る」

私自身は、相談のスタートはここです。大概、相談のスタートは契約書なのですが、メーカーなので、企画・調達から販売・アフターサービスまでの案件全体像を踏まえた契約の位置づけを確認することが初動です。以前にも本ブログに記載したことはあるのですが、タテ(時間)とヨコ(関係する当事者・モノ・権利・情報等の案件に必要なパーツ)を見る。そして、アキレス腱になりそうなところを「診る」。

相談以外の契約や法令上の要対応事項、社内で決定・決裁が必要なポイントなどを洗い出し、同時に”要らない契約”も抽出します。契約相談にそのまま応えない、という回答はこの「診る」から生まれてくる。

 

事業を「見る」(「視る」)

相談された案件が、既存事業の一つの案件なのか、既存事業から少しはみ出た事業なのか、まったくの新規事業なのか。そして、結局は、儲かるのか、否か。法律や契約の条件は見るけれど、儲かるのかについては法務の範囲外として、口を出しちゃいけないと遠慮してきたような気もしますが、わからないなりにも考える。競争優位性はあるのか、どのくらいの利益を見込み、どのくらいのボリュームなのか。どれくらいのスパンを見越しているのか。時期は適切か。法務である前に、同じ会社の社員なので。ここは、法務をバックグラウンドにしつつ、経営の数字や戦略を目下勉強中ではあります。まだ“事業”というレベルで捉える経験値が低いので、個人的には、案件全体を見た次に、事業を見る(儲かるのかをシビアに視る)というのが現状です。

事業上のリスクを相談者にそのまま回答することもあれば、取締役に報告・相談するという形でのアクションをとることもありますね。

 

契約書を「見る」「観る」

で、そのうえで初めて契約書を見ます。契約書に飛びついた後に抽象に戻る=具体にどっぶりは待った後に視座を上げるということが、個人的にはあまりうまくいかない。

見方としては、まずは眺める感覚で、細部には入らず「見る」。そのうえで、案件全体像と比較しながら、カギになりそうな条項の仮説を立てつつ、契約書の細部まで、集中して「観る」。

 

 

社員を「看る」「診る」

法務という仕事を通じて、顧客に価値を提供するという目的のために、大事なのがこれでないかなと思うのです。相談してくれる社員は、残念ながら丸投げの場合もあるけれど、本当に悩んでいたり困っていたりすることの方が多い。

特に、法令違反かも…と思って相談してくるときには、みんな不安そうな顔をしている。違反してしまった場合はもちろん、製品のリリース直前で製品表示にミスが発見されたとき。「違反なので、NGですね」というのは簡単だけど、「そうか、リリース直前で悔しいね。やれること、何とか一緒に考えよう。」と、まずは絆創膏を貼らないと。社員を通じて、製品を通じて、価値を提供するとしたら、社員との関係性の質を高めないと、法務が提供できる成果は上がらないわけで。単に依頼内容にそのまま応じるということではなく、厳しいことも言える関係を構築して、その社員の数年先と製品のEOLまで寄り添うということを目指したいものです。

 

ハマる案件というのは、契約を観る/案件を見る・診る/ 事業を見る・視る/という見極めができていないことに基づくのではないかと思うこの頃。通常商流の通常製品の販売なのにやたらスキーム検討に時間をかけて回答が遅くては、相談する方もげんなりする。

通常の相談との差異が大きい、すなわち各要素においてイレギュラー度が高いほど、契約だけでなく、案件全体や事業全体をみにいく。逆にレギュラー相談は契約書だけを見ることでもOK。

 

現在、チーム内で相談の対応方法を再検討中であり、今後は以下のようにするつもりです。

  • 契約を「みる」→1次担当+上位者の2次チェック
  • 案件を「みる」→2人で共同対応
  • 事業を「みる」→法務チーム全体での対応*1

これまでは相談の難易度で担当者を変えてきたけれど、それだとチーム全体として成長できていないことが判明しました。先輩が後輩にノウハウとして説明する、チーム内で一問一答が飛び交うのではなく、先輩が複雑案件で悩む横で後輩も一緒に悩むことで、肌感覚を育てていこうかなというところ。

 

 

解像度をしなやかに変え、抽象と具体を行き来しながら相談を起点とする成果の上げ方を探ること。これをどう実現していくか、ここも若手に向けて言語化していかないといけないなと、あらためて思うのでありました。

 

薄っぺらなエントリですが、リハビリエントリということで。

 

 

 

 

*1:といっても、プチ法務なので5人程度ですが。