「法務アローン」な場合の契約レビュー術

Twitter上で「法務」にまつわる親父ギャグが流行って(?)いたようですので、乗っかってみました。「法務アローン」を特に気に入ってしまったので、「法務アローン」≒「一人法務」の場合の契約レビュー苦労話をちょっと書いてみようかと。

チェック者がいない。。

当たり前ですが、「一人法務」なのですから、自分のほかには法務業務を担当する人がいません。上司は法務畑ではなく、管理部門を統括している部長だったり、総務部門と兼任ということが多いと思います。こういった場合、自分自身がチェック者にもなる必要があります。これがなかなか難しい。

なので、こんな工夫を。

一人法務時代にやっていた工夫のいくつかを思い出してみました。

  • 寝かせる

とにかく早めに一通りレビューする。そして、ちょっと寝かせる。私の場合は翌日まで寝かせました。自分がさっきレビューした内容、直後だと疑ってかかりにくいもの。翌朝すっきりした気分で、前日レビューした契約書を疑いの目で読みます。すると、「あれ?ここが違う…」「このコメントじゃ伝わりにくいな」という箇所が必ず数ヵ所は出てくるものです。

  • レビュー日誌をつける

一人法務の敵のひとつは「不安」です。前任者がいない法務パイオニアの場合は特に会社にとって法務業務自体が初めてのこと。ここまでやったらOK、このレベルのレビューならOKという基準がありません。常にこれでいいんだろうかという不安を抱えながらの仕事です。一人法務で不安だからと時間ばかりかけてレビュー結果を伝えることが遅くならないよう、ある程度の自信を積み重ねていくことが必要なのかと思います。
新人の頃は「レビュー日誌」なるものを手書きでつけていました。今考えるとかなりアナログです。NDAなどの小さな案件であっても案件ごとに必ず1枚。依頼者、相手方、契約類型、回答までの日数、途中経過、反省点と次へのアクション。業務量が多くなってさばくことに忙しくなっても続けました。記載した内容そのものも大切だったとは思いますが、日誌そのものが自信を持つ助けになりました。ある程度の分量になった日誌をみると、これだけ誠実にこなしたから少しは成長しているはずと思えたものです。

  • チェックリストに格上げす

日誌の反省点が溜まってくると共通項を抽出してチェックリストに格上げしました。契約類型ごとのレビューポイント、記載すべき一般条項のチェックリスト、レビュー前に確認すべき周辺情報のチェックリスト等々。チェックリストは随時更新していきます。たとえ自分が作ったものでも“拠り所”があるということはとても大きな安心材料です。

  • 他社の法務から学ぶ

直接会って教えを請えたらどんなにいいだろう…。地方の場合は法務同士が集まる場がないので、他社の法務の方に会うことはありません。でも、会わずとも学ぶことはできます。他社の契約案は恰好の勉強材料。特に大手さんの取引基本契約。厚めの色紙に印刷される50条オーバーの基本契約書はノウハウの集合体。各社の条項を比較してベストな条項を考えてみたり、新雛型への更改のお知らせを読んで他社法務の考え方を学んでみたり。

  • 三者に読んでもらう

重要な契約の場合、文章の精査に慣れているIR担当や総務担当の方に契約書案を読んでもらうこともありました。わかりにくい箇所を指摘してもらえるだけでもかなり助かります。




法務アローンというとちょっと寂しさを感じる言葉にも思えますが、自分自身を自分の味方にできるよう努力し、法務以外の人にも助けてもらう。そんなことを続けていたような気がします。