あけましておめでとうございます。

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
本日、仕事始めですが、2017年の目標はまだ確定せず。

2016年、上半期は会社の大きなうねりに乗って、なんとか“こなす”ことが精一杯で、下半期は人事分野の大きな課題をクリアすることができず、何もできなかったという思いが強い1年でした。流れに乗らねばならない時期もあるとは思い、流れの中で自分の意思を反映すれば何かしらの意義を見つけられるのではないか・・・とも思ったのですが、起点に自分の意思があり、そして達成にまで到達しない限りはモヤモヤしか残らないのだなと、今もモヤモヤしています。


今年の思いは今のところ3つ。


積読解消」


「戦友獲得」


「減量必達」


リアルにも積読を解消したいですし、精神的にも積読状態から脱却せねばなりません。そして、自分自身が自分の戦友になれるくらいに、誇れるものの欠片を手に入れる1年にしたいと。法務の現場から離れることが多く寂しさも感じるこの頃ですが、今の置かれている状況から法務を眺めて違う視点から実行することもまた大切だと感じています。


そのうえで、体重は3キロ減らしたいと思うのであります。


みなさまにとってよい1年になりますように。

「まさか?!」の探し方。

@dtkさんからマイクをいただきました。手のひらの歌詞をカンペに階段を降りたいと思います。
さて、無謀にも今年も登録してしまった「Advent Calendar」。法務:人事ほか=3:7くらいの現状ですから*1、新しいネタを仕込むこともできず、新人法務スタッフ向け的エントリになりました。「とある会社の、とある法務担当が行っていること」をまとめてみましたよ!

今期、法務にめでたく新入社員が配属され*2、順調に業務を進めてもらっているのですが、契約業務というよりも新企画の取引やリスクのトータルデザインがなかなか難しいのかなと思われます。ということで、リスクの抽出は、場所や時を“動かして”考えてみてはどうでしょう、というテーマです。契約業務といっても契約書ドラフト・レビューそのもので「違い」を生むことはそう簡単ではなく、契約以外のところに手当をどう密かに仕込んでおくかに業務の比重が移行しているように思われます。


完全なる当社比、かつ主観で申し訳ありませんが、この数年、法務案件でも“vuca”を痛感しています。不安定で変化が激しく(Volatility)、先が読めず不確実性が高い(Uncertainty)、かつ複雑で(Complexity) 曖昧模糊とした(Ambiguity) 世の中と言われますが、法務に寄せられる企画案件もまさにそのもので、以下、最近メーカーの法務として感じている傾向です。

<メモ>
・ハードウェアではなく、サービスが主役化している。
ハードウェアは「入口」であり、極端に言えば単なる「箱」であるものも多い。SPOT売買+保証期間で御免!では成立せず、サービスをいかに継続するかが重要ポイント。
・当事者が複雑化している。
ハードウェアベンダー、ライセンサー、生産外注先、開発外注先、販売会社、最終顧客・・・という従来の当事者に加え、最近ではスマホアプリも当然に必要だったり、サービサーが複数登場したり、かつそれらが従来以上に有機的に連動しているため、どこか1社の業務が停滞したときの影響が大きい。
プラットフォーマーの変化が激しい。
スマホアプリがその典型ですが、OSが頻繁にアップデートされたり、密かに細かな仕様が変わったりするため、ソフトウェア開発完了で契約完了、とはいかない。いかに他社の力も借りながらG社さんなどの細かい動きに遅れずについて行き続けるか。

さて、そんな中で手を事前に打って事後の「まさか?!」をつぶしておくか。

(1) 流れの中のリスクを把握するために、線をつなぐ。

【横】

取引のパーツを横に動かします。当事者相関図を書き、そこに人・モノ・お金・情報・権利・サービスを流していきます。この際、最上流から最下流、派生する関連企業・再委託先まで丁寧に拾っておき、欄外に脅威となりうる特許権者も書いておきます。全体の流れの中で、自社のみがリスクを負うことにならないか、適切に分配できるリスクはないか。価格にONせざるを得ないリスクはないか。これは、大きなリスクを拾う作業になりますね。

<コツの一例>
・資本金は必ず、場合によっては社員数や親会社も記載します。「下請事業者だったの?!」「エースエンジニア欠いたらどうなるの?!」と後から気づくとげんなりすることも。
・実際には多数の交渉が同時並行で進みますが、その中でもこの会社からこの保証を得られない限り、他の交渉を進めてはいけないというポイントをおさえます。
・社内担当の名前も記載します。社内担当がハードルそのものということもあります。
・それぞれの当事者に吹き出しをつけ、その人になりきったつもりで台詞を書いています。ユーザーの年代、性別、使用するシーンとその感情・・・などを考えると製品への期待値がイメージできるので、下流から上流に再度戻るヒントになることもあります。

【縦】

時系列で取引のより細かいパーツを流します。主要な当事者と自社の関係を、発注から納品、アフターサービスまでを動かしてみます。いつ、どんな帳票を動かして、どのように受領して、どう梱包して発送するのか。個人情報はどうやって受け取って、どう加工していつ廃棄するのか。小さなリスクを拾う作業です。事業部はモノ・お金は書いてくれても情報を落としがちなので、情報の一生は必ず念頭に起きます。

(2) 点に対する時の変化を想像する。

流れの中で起き得る「まさか?!」を把握できたらば、点で考えます。静かに、じっくりと。

【ヒト】 〜この人、「まさか?」の種を持っていないか?

当事者図の中で、変化が大きそうな人はいないかを考えます。特に最近気になるのが、小さいけど良質の技術を有している会社。財務基盤が脆弱だからと避けていては、リスクヘッジのためにと商社等を介在させていては、スピード面からも他社との違いは生み出せない。経験上、痛い思いもし、怖いなと実感するのは、利用権の登録制度がないソフトウェアのライセンサー/開発ベンダーです。仮にソフトウェアベンダーが倒産したり事業が停止したりしても、自社ビジネスを止めないために色々と検討します。

<検討メモ>
ソースコードおよびその関連ドキュメントの権利を確保する(全部の譲渡/一部譲渡/共有)*3。この際、既にSofticに譲渡や質権設定等が登録されていないか、必ず確認する。
・Softicへ登録する(二重譲渡の危険性がある場合は特に。)。
・カスタム開発の場合、コード上も従来部分とカスタム部分を明確に分け、後者のみ権利譲渡を受ける。
ソースコードの現物を確保する。※開発途中でも段階的に確保。
・少なくともエスクロウ制度を使って最低限バグ修正はできるようにしておく。
・以後、自社で改変しやすいコーディングにしてもらう*4
・一括ライセンスにする。「未履行」と主張されうる条項は別契約にする。
・代替可能な他社との契約準備を平行して進めておく。     ・・・などなど。

権利を確保するという法的な側面と、自社で改変可能にしておくという実態をにらんだ側面の両方を意識しておくことが大切なのかなと。他にもまだまだあると思うので、案件発生の度に他に対策はないか?を考え続けています。あ、この際、下請法の配慮も忘れずに。

【モノ】 〜この「モノ」、誰かの「まさか?」を生まないか?

ユーザーの期待値との乖離を生まないか。社内から新規ビジネスの相談を受けた時点で、たとえそれが契約書の相談であったとしても、踏み込んで製品パッケージ、取説、広告媒体などの企画もあわせてチェックします。この際、リアル店舗ECサイトで品定めをするところから、パッケージを開けて実際に電源を入れて・・・という一連の流れを想像します。その際に、ターゲットユーザーの「ん?」が生まれないか。
上述の通り製品といっても長期サービスが付帯することも増えてきたので、現在のユーザーとともに、製品耐用年数から考えられる将来のユーザーや市場の期待をイメージしています。未来から今を見る感じでしょうか?「現在5歳のお子さんがいるユーザーの5年後の親御さんの期待は?」「5年後にこの製品の廃棄ルールはどう変わりそう?」などなど。製品クレームは数年後に炎上することも多かったりするので。



事前に未来の「まさか?!」を把握して手を打つことで、取引できる企業の幅が増えたり、実現できるサービス範囲が広がったらば。きっと法務担当の皆さんは同じように考えているんじゃないかなぁと思いながら、いつもながら最新トピックも何もない徒然エントリを書いてみました。
まさに現状書けることを書いてみただけなのですが、こういうのもきっと、ありなはずです(・・・よね?)。では、猫科つながりで明日はタンザニアネコさん(@Tnatz2010 )へ!

*1:当初、「法務と人事の間で」的なエントリを考えていたのですが、Advent Calendar 初日から法務キャリア論が盛り上がっているので、ちゃんと考えてアップしようと思います。

*2:しかも待望の法務女子!地方で法務女子はわりとレアキャラです。

*3:契約書で考えられる対策として、著作権全部の譲渡/一部の譲渡/持分の譲渡/複製権等、必要な権利の持分譲渡など。ただし、未履行の双務契約として契約そのものを解除されることもあるため、牽制的意味合いにとどまるかもしれません。

*4:これは契約書を作成するときにも通じるかもしれません。後々修正しやすい条項の建付けとしておくという配慮、皆さんされていますよね。

4月1日に思う。

相変わらずブログは放置ですが、3年前には4月1日にエントリを書いていました(→「新しい1日。」 )。
このところもドタバタしている日々ですが、お昼休みにブログを読むことができるくらい、今週はちょっと「狭間」な感じです。


3年前に1年生だった長女も、今日から4年生。「明日から新しい1年生が学童にくるんだよ!」と話す長女の顔はすっかりお姉さんのそれでした。「じゃあ、しっかりお世話してあげないとね。」と言うと、当然よねという顔をする。
次女は年中さんになりました。教えないでおこう、「文字」を認識しない世界を少しでも長く…という親の思惑とは裏腹に長女に教えを乞い、本も自力で読み始めるようになった次女。

たくましさは育てるものではなく、人間に内在するのもなんだなと思います。



会社では、本日が入社式。初々しい彼ら・彼女たちです。
「始まりがあるから終わりがある。私は今、始まりに立っている。」そんなコメントも若い彼女たちから出たのですが、終わりがあることを知っているからこそ今が美しく、愛おしいのではないか、そんな風に感じました。
今日は「あさが来た」を見て、号泣してから出社したからかもしれません。



さて、残り半分の2016年4月1日を大切に、丁寧に。

とある「ぐだぐだ法務」の2015年カレンダー

年々レベルが上がる「法務系Advent Calender」です。が、レベルに怯むことなく参加エントリーをすることにも意味があるのだと思います。そう、2015年の自分のテーマは“カッコ悪さを獲りにいく”なのです。
さて、法務という職種、「臨床法務」という言葉があるように、突然重病患者が運ばれてきた救急外来のよう状態を呈することもないでしょうか。年間の計画をあれこれと立ててみたものの、その多くをすっ飛ばすほどの事案に遭遇することもあります。私自身、自分のキャパシティを超えることのオンパレードでしたのでこの1年間は本当に行き当たりばったりでした。そんな2015年を(公開しても支障のない範囲で)オープンにしてみようと思います。ぐだぐだだった・・・と落ち込むよりも、ぐだぐだを振り返ればそこに何か発見があるのではないかと自己正当化してキーボードを叩いてみます。

1月

12月末の会社忘年会で言われた言葉で俄然やる気を得、例年にも増して前がかりな気分でした。「朝、インプットorアウトプットする。最悪5分でもよいので毎朝続けること」「毎月1本のエントリを」などといっておきながら、12月の今、振り返ってみるとどれも実現できず。
娘も3歳になるので勉強時間をとれるだろうと思いきや、“娘が大きくなる=自分も年齢を重ねる。”ということなので、今まで以上に無理が利かないことを想定すべきでした。1月は仕事初めのその日からインフルエンザで1週間休むことになりました。1月の体調不良を示す、自分のつぶやき。

長女が冬休みの思い出を描いた絵を持ち帰ってきた。…家族全員次々に体調不良で倒れた冬休みの我が家。「インフルエンザで寝込むママと宿題をする私」だった。

そして仕事面において2015年の始まりは、前年から継続している紛争事案対応からです。

2月

2015年は諸般の事情からコンプライアンスについて形式も実質も立て直しを図る必要性に迫られたため、形骸化していたコンプライアンスリスクマップの見直しに着手します。“標準的なリスク対処ができていないもの”をターゲットに、これまで避けてきたカテゴリに気合を入れて取組むことに。まずは「セキュリティリスクの見直し」に着手し、関連法令を一から整理したり、情報種別ごとに“情報の一生”というフローを作ってみたりして、情報システム部門を巻き込んで試行錯誤の始まりです。
この間にも、紛争対応はさらに進みます。紛争は「攻め」なのか「守り」なのかでそのアクションは大きく異なると思うのですが、同時に発生すると頭の中も手作業もぐちゃぐちゃに。

3月

紛争対応×コンプラ見直しを進めている中、法務とはまったく関係のないセミナーに参加し、年初の気合い以上のやる気を獲得します。U理論や成功の循環モデルといった内容に関連するセミナーといえるのでしょうが、人生を考え直す時間となりたっぷりエネルギーを充填できた3月です。セミナーでの“正義の反対は「正義悪」ではなく「相手の正義」だ”という言葉がずっとひっかかり、“法務って正義を扱う仕事なんだろうか・・・”などとぐるぐる考える中で“コンプライアンスの正体は「愛」である”なんてよくわからない確信を得たりしました。

4月

世の中は新年度。仕事でも色々新局面を迎えたり、大きなヤマが佳境に入ったり。4月〜6月は大き目のヤマを複数抱えている中、いつどんな矢が飛んでくるかわからず、しかも飛んできたときには緊急対応なので常にピリピリしていました。
これまで私が担当していた研修や複雑なビジネス案件を若手メンバーたちに任せるほかない状態だったのですが、振り返るとこれは非常によかったのかなと思います。ほぼ日に「現実を受け止めるというのは何か重いものを背負うのではなく、手放す感覚だ」といった趣旨の言葉があったのですが、まさにそんな感じです。勇気をもって手放すことで得られるものがあったんだと、このエントリを書きながらあらためて実感しております。

5月

継続しているヤマの影響で、出張が多くなり始める頃です。新幹線が開通し、さくっと東京に行けるようになったために、さくっと東京出張が組まれます。日々はドタバタ対応し、出張日の移動時間に企画諸々考えるという習慣がつき始めました。

6月

大ヤマ×3が相変わらず平行して進みます。そしてこの頃、「今年は契約相談が多いな・・・。」というぼんやりとした印象が確信に変わります。この頃から案件分析のためのExcel情報入力がまったくままならなくなるほど、さばくことに必死になってきました。ビジネスが複雑化し登場人物が増えるため、比例して契約の本数が増加します。このビジネスの多様化・複雑化に伴い、これまではあまり意識しなくても問題がなかった独禁法の様々な規制を意識せざるを得なくなりました。2015年のコンプライアンスの次のターゲットは独禁法リスクと確定することに。

7月

今年ドタバタした一番の理由。ナナメ上の上司の異動に伴い、法務だけでなく人事業務の一部も担当することになりました。守備範囲の拡大が今後の課題となるであろうことは意識していたつもりですが、拡大は総務・コーポレート法務方向かと思っておりました。が、「組織」は常に動くもの。欠けたところを誰かが埋めなければならないとき、既存の担当業務との親和性は問われないものですね。小さな法務のキャリアパスとしては管理部門のその他の分野も管掌することは必然です。そのことを漠然とイメージはしていたものの、時期も方向も想像外でした。
人事業務の一部を扱うようになり、私自身がこれまでビジネスという「コト」ばかりを扱ってきたのだと痛感しました。“新規ビジネスのために事業部に足を運ぶ”から、“ビジネスの話を口実に人に会う”という回数が増えてきました。これまでどれだけ“人”を見てこなかったんだろうと思う機会に何度も何度も遭遇しました。ビジネスを成立させるもの、結局は人なのに。
法務業務では、案件対応はメンバーに任せ、個人的には時間を作って独禁法にこってり取り組みます。強制的に発表の機会を作り、社外勉強会で発表もしましたが、取組めば取組むほど闇の中に潜っていく感じで、当時“独禁法は毒飲法だ”なんてつぶやいてました。

8月

法務と関係のない社内イベントとの企画に走り回ります。小さなチームとしての法務をマネジメントするだけでも四苦八苦なのに、多くの運営スタッフを束ねなくてはならず、結局うまくとりまわせないマネジメントを自分自身が作業することで補うという、非常に浅はかなマネジメントに終わりました。お盆のお休みは、イベントの作業に追われ、久々に徹夜もしました。・・・お肌に悪い日々。でも、法務以外のつながりを作ること、遠回りでも法務業務にも役立つはずだと思うんですよね。

9月

コーポレート法務系の業務をヘルプする月間です。9月は記憶も記録も薄い。。

10月

法務でも人事でも出張が続いて、普段車移動の私は足の裏の皮がベロッとむけました(半分は空手の稽古のせいです)。

11月

人事系のあれやこれやに奔走します。法務と人事、使う発想がやはり違うと思うのですが、学生の時間割のように切り替わるものではなく、法務の緊急相談(「夕方出稿なんですけど、景表法問題ないですか?」)の直後に、フロアでは話せないセンシティブな人事相談が舞い込んだり。なれない人事系の判断だけでなく、法務業務の判断のキレが悪くなり、悪循環の中にいる自分を認識しながらも打開できないモヤモヤに包まれていました。そんなとき、Msutさんの「切り替えの『キレ』を読み、「あるある!」と心の中で大きく叫びました。

12月

はっ!と気づくともう師走。「法務系Advent Calendar」の季節で年末を感じます。


こんなドタバタの1年間でしたが、大きく2つの要因がありました。一つ目は予想外の危機、すなわち外部からの脅威に対する見積もりが甘かった。市場の変化スピードが上がるにつれ、外部からの脅威も増えていくことに無頓着であったと深く反省です。2つ目は自分のキャリアに対する見通しが甘かった。管理職見習いを数年経験した後に管理職になれたら隣接業務から少しずつ業務範囲を広げていく…なんてストレートに進むものではないと実感しました。そして、プライベートでは、小学校のPTA役員をついに引き受けたり、3歳の次女のクループ性の酷い咳のためにずっと抱っこして看病する日々が続いたり、さらにそんな中でも朝RUNや空手を始めたり。



振り返れば本当にぐだぐだ過ぎる1年でした。が、ぐだぐだの中でしか得られない、自分自身に対する強烈な不甲斐ない思いやかっこ悪さを痛感できたことは、年初に立てた目標を違う形で実現できたようにも思います。また、私がぐだぐだだと、メンバーが成長します。事業部門の管理職から法務メンバーに対するお褒めをいただく機会も増え、この点は本当によかったと思っています。
法務にこってり関わることのできる時間が減ってしまったことが悔しくもあり寂しくもあるところですが、2016年は“予想以上に、予想外のことが起きるはずだ”と肝に銘じて、肩肘張りすぎずに、さらに不格好に過ごしたいと思う、12月なのでした。
ぐだぐだな1年を締めくくるに相応しい(?)、ぐだぐだエントリでありました。

抽象と具体と。

先日のセミナー受講依頼、いくつか気をつけていることの一つに「思考停止」に陥らないようにすること。うーん、というよりは、自分が思考停止しているなと気づけるようになっておこうということ。

思考停止。その解釈は色々あると思いますが、「物事を考える次元が変わらないこと。言い換えれば抽象と具体を行き来しないこと。」という説明がいたく腹落ちしました。法務業務の中でよく「ひいて考えてみよう。」「俯瞰してみよう。」などと声をかけることが多いのですが、今ひとつしっくりこず。



「誰の、何のためのビジネスだっけ?」
「この製品を手にしたときにどういう感情をもってほしいんだろう?」
「そのために今回優先するものはスピード?確実性?」
という抽象的な問いと
「ユーザーがこのサービス始めるときにこのボタンを迷わず押せる導線になってる?」
という具体的な問いを行き来しながら解決策に近づいていくことが必要なのだろうとなんとなく思っているこの頃です。


先日の新入社員向けの研修において何を伝えようかという議論の中で、「自ら考えられる人材であってほしい」なんて意見も出されたのですが、おそらく法務に丸投げをする依頼者もきっと考えている。いかに早く、多く、売上をあげるのか。それを「考えていない」と評価することはよろしくないのかなと。自分のフィールドについては一生懸命考えている依頼者に対し、依頼者自身の抽象度・具体性の枠外にある、抽象度の高い問いを投げかけられるか、とことん具体性を突き詰めた問いを投げかけられるかが法務の腕なのだろうとふと思ったのでありました。


そんな、徒然なる本日のツブヤキでした。

電脳メガネ

最近、比較的外部研修に参加させてもらっているのですが、先月、法務とはまったく関係のない研修に参加してきました。
う〜ん、なんというのでしょう。啓発セミナーでもなく、スキルアップセミナーでもなく。でも確実に社会人経験15年の中でもっとも刺激的でためになったセミナーでした。知人にこれは是非勧めたい!と思っても、うまい表現がみつからない。「騙されたと思って、行ってみない?」としか言いようがなく。

組織改革や人材育成をテーマとしていたのですが、参加者の中で法務はひとりで経営者や総務・人事の方がほとんどでした。「法務の方でこのような研修に参加されるのも珍しいですね。」なんて言われたのですが、ビジネススキームや契約っていかに主体的に考え抜くか、本質を考え抜くかがキモであり、誰のためにどんな価値を提供するのかを考え抜くステップがないと表面だけをなぞって思わぬ落とし穴がある気がしておりまして。いつまでたっても、法務がリスクの視点を指摘し事業部が対処するというフローから抜け出せないのではないかと。このところ、法務のスキルアップでは変えられない、本質的なところに切り込まないとな・・・とモヤモヤしていたのであります。


で、たくさんヒントをもらいつつ、さらなる悩みも得た2日間になりました。自分の「在り方」を見直す契機となり、常に頭上にイメージできるような新しい視点を入手したので、これまでとは見える世界が違っています。メガネの度がぴったりあった感覚というか。ちょっと違うかもしれませんが、「電脳メガネ」をかけたらこんな感じ?というような*1。抱えきれないくらいチャージできた感じですが、講師に言われたように、いつか自分がパワーを与える側になれるようにと意識していこうかと。




かなり心に刺さった時間になったので、忘れないように自分用につぶやいておきます。

*1:電脳コイル」のアレです。ちょっとどころかかなり違うか。。

4月はコンプライアンス。

4月。オフィスにもピカピカの新入社員が仲間入りする季節。彼らとの最初の接点が「コンプライアンス研修」という法務の方も多いのではないかと思います。今年はコンプライアンス研修をチームメンバーの若手2人に任せることとしましたが、その際にこれまでどんな研修を行ったのかをふりかえってみました。

○初期:カタイ講座型
担当の取締役が行動憲章や行動規範を解説したり、1項目ずつ輪読したりということを行いました。この頃は「重さ」や「形式」を重視していたように思います。


○中期:講座+ワークショップ型
社会人になって初めて必要となる基礎知識のプチ講座と契約ゲーム・新ビジネスゲームなど行いました。チームに分かれて買主・売主双方の契約条件を提示しあったり、業界の“やっちゃった”事例をベースに、対応策を考えてもらったり。法令や契約の知識があると安心だよね、考えると答えにつながるヒントは誰でも見つけられるよね、そうなるとリスクが減らせるよね、ということをプチ体験してもらうプログラムにしました。少しでも「実益」があることと、法務への障壁を排除したいという思いがあり、このときは意識的に「コンプライアンス」「法令遵守」という硬い言葉を避けていました。


○現在:知識は不要?で検討中
中期の知識+ワークショップという形式を行ってみて、「知識」部分は新入社員のうちはほとんど活用できていないという事実を踏まえ、知識は新人研修プログラムではなく、業務に必要なタイミングで部署ごとに個別に抑えていく方がよいのではないかという考えに至りました。
で、約1ヶ月の集合研修の中、研修、研修、講座、講座…と続く彼らの頭の片隅やココロのどこかに研修のキーワードや法務スタッフの顔がちらっとでも残ればよいのではという方向で一度トライしてみることに。
以下の2点を狙いとしました。
・法務とのつながりをつくる。
・「これからこの会社でどうありたいか(≠何をしたいか)」を考え、その思いを形に残す。

法務としてはどうあってほしいのかについては法務の若手メンバー自身にじっくり考えてもらい、そのキーワードを伝える予定です。コンプライアンス研修のもうひとつの狙いは法務メンバー自身に心の底から真剣に自分自身がどうありたいかを考え抜いてもらうこともあったりします。新入社員と近い年齢の若手スタッフだからこそ、新入社員のココロに響かせることができるのではないかと期待しております。
とはいえ、最後に私から新社会人だからこそのリスクとしてのSNSの活用について研修のオマケ的に具体例として簡単に触れ、コンプライアンスに対する思いも伝えて締める予定です。


諸々あって、最近ずっと「コンプライアンス」の正体なるものを追いかけていました。これまでの研修では、コンプライアンスの定義として「法令遵守」「ステークホルダーの期待に応えること」などなど説明していたのですが、説明しながらずっと違和感を抱えていました。最近の実体験から、コンプライアンスは硬いものでも冷たいものでもなく、やわらかく熱いもののような気がします。ひとつの答えが「各自の心の奥にある正義感」なんて感じかなと思ったのですが、実は定義する必要はなく、考え続けること、答えを探し続けることこそが「コンプライアンス」に一番必要なのではないかと思っているこの頃です。

研修に即効性があるものではないのでしょうが、彼らの身を守り、そしてこれからの社会人生活を安心してドライブできるように、シートベルトのような存在になりたいなと。さて、うまく伝えられるかな。