とある「ぐだぐだ法務」の2015年カレンダー

年々レベルが上がる「法務系Advent Calender」です。が、レベルに怯むことなく参加エントリーをすることにも意味があるのだと思います。そう、2015年の自分のテーマは“カッコ悪さを獲りにいく”なのです。
さて、法務という職種、「臨床法務」という言葉があるように、突然重病患者が運ばれてきた救急外来のよう状態を呈することもないでしょうか。年間の計画をあれこれと立ててみたものの、その多くをすっ飛ばすほどの事案に遭遇することもあります。私自身、自分のキャパシティを超えることのオンパレードでしたのでこの1年間は本当に行き当たりばったりでした。そんな2015年を(公開しても支障のない範囲で)オープンにしてみようと思います。ぐだぐだだった・・・と落ち込むよりも、ぐだぐだを振り返ればそこに何か発見があるのではないかと自己正当化してキーボードを叩いてみます。

1月

12月末の会社忘年会で言われた言葉で俄然やる気を得、例年にも増して前がかりな気分でした。「朝、インプットorアウトプットする。最悪5分でもよいので毎朝続けること」「毎月1本のエントリを」などといっておきながら、12月の今、振り返ってみるとどれも実現できず。
娘も3歳になるので勉強時間をとれるだろうと思いきや、“娘が大きくなる=自分も年齢を重ねる。”ということなので、今まで以上に無理が利かないことを想定すべきでした。1月は仕事初めのその日からインフルエンザで1週間休むことになりました。1月の体調不良を示す、自分のつぶやき。

長女が冬休みの思い出を描いた絵を持ち帰ってきた。…家族全員次々に体調不良で倒れた冬休みの我が家。「インフルエンザで寝込むママと宿題をする私」だった。

そして仕事面において2015年の始まりは、前年から継続している紛争事案対応からです。

2月

2015年は諸般の事情からコンプライアンスについて形式も実質も立て直しを図る必要性に迫られたため、形骸化していたコンプライアンスリスクマップの見直しに着手します。“標準的なリスク対処ができていないもの”をターゲットに、これまで避けてきたカテゴリに気合を入れて取組むことに。まずは「セキュリティリスクの見直し」に着手し、関連法令を一から整理したり、情報種別ごとに“情報の一生”というフローを作ってみたりして、情報システム部門を巻き込んで試行錯誤の始まりです。
この間にも、紛争対応はさらに進みます。紛争は「攻め」なのか「守り」なのかでそのアクションは大きく異なると思うのですが、同時に発生すると頭の中も手作業もぐちゃぐちゃに。

3月

紛争対応×コンプラ見直しを進めている中、法務とはまったく関係のないセミナーに参加し、年初の気合い以上のやる気を獲得します。U理論や成功の循環モデルといった内容に関連するセミナーといえるのでしょうが、人生を考え直す時間となりたっぷりエネルギーを充填できた3月です。セミナーでの“正義の反対は「正義悪」ではなく「相手の正義」だ”という言葉がずっとひっかかり、“法務って正義を扱う仕事なんだろうか・・・”などとぐるぐる考える中で“コンプライアンスの正体は「愛」である”なんてよくわからない確信を得たりしました。

4月

世の中は新年度。仕事でも色々新局面を迎えたり、大きなヤマが佳境に入ったり。4月〜6月は大き目のヤマを複数抱えている中、いつどんな矢が飛んでくるかわからず、しかも飛んできたときには緊急対応なので常にピリピリしていました。
これまで私が担当していた研修や複雑なビジネス案件を若手メンバーたちに任せるほかない状態だったのですが、振り返るとこれは非常によかったのかなと思います。ほぼ日に「現実を受け止めるというのは何か重いものを背負うのではなく、手放す感覚だ」といった趣旨の言葉があったのですが、まさにそんな感じです。勇気をもって手放すことで得られるものがあったんだと、このエントリを書きながらあらためて実感しております。

5月

継続しているヤマの影響で、出張が多くなり始める頃です。新幹線が開通し、さくっと東京に行けるようになったために、さくっと東京出張が組まれます。日々はドタバタ対応し、出張日の移動時間に企画諸々考えるという習慣がつき始めました。

6月

大ヤマ×3が相変わらず平行して進みます。そしてこの頃、「今年は契約相談が多いな・・・。」というぼんやりとした印象が確信に変わります。この頃から案件分析のためのExcel情報入力がまったくままならなくなるほど、さばくことに必死になってきました。ビジネスが複雑化し登場人物が増えるため、比例して契約の本数が増加します。このビジネスの多様化・複雑化に伴い、これまではあまり意識しなくても問題がなかった独禁法の様々な規制を意識せざるを得なくなりました。2015年のコンプライアンスの次のターゲットは独禁法リスクと確定することに。

7月

今年ドタバタした一番の理由。ナナメ上の上司の異動に伴い、法務だけでなく人事業務の一部も担当することになりました。守備範囲の拡大が今後の課題となるであろうことは意識していたつもりですが、拡大は総務・コーポレート法務方向かと思っておりました。が、「組織」は常に動くもの。欠けたところを誰かが埋めなければならないとき、既存の担当業務との親和性は問われないものですね。小さな法務のキャリアパスとしては管理部門のその他の分野も管掌することは必然です。そのことを漠然とイメージはしていたものの、時期も方向も想像外でした。
人事業務の一部を扱うようになり、私自身がこれまでビジネスという「コト」ばかりを扱ってきたのだと痛感しました。“新規ビジネスのために事業部に足を運ぶ”から、“ビジネスの話を口実に人に会う”という回数が増えてきました。これまでどれだけ“人”を見てこなかったんだろうと思う機会に何度も何度も遭遇しました。ビジネスを成立させるもの、結局は人なのに。
法務業務では、案件対応はメンバーに任せ、個人的には時間を作って独禁法にこってり取り組みます。強制的に発表の機会を作り、社外勉強会で発表もしましたが、取組めば取組むほど闇の中に潜っていく感じで、当時“独禁法は毒飲法だ”なんてつぶやいてました。

8月

法務と関係のない社内イベントとの企画に走り回ります。小さなチームとしての法務をマネジメントするだけでも四苦八苦なのに、多くの運営スタッフを束ねなくてはならず、結局うまくとりまわせないマネジメントを自分自身が作業することで補うという、非常に浅はかなマネジメントに終わりました。お盆のお休みは、イベントの作業に追われ、久々に徹夜もしました。・・・お肌に悪い日々。でも、法務以外のつながりを作ること、遠回りでも法務業務にも役立つはずだと思うんですよね。

9月

コーポレート法務系の業務をヘルプする月間です。9月は記憶も記録も薄い。。

10月

法務でも人事でも出張が続いて、普段車移動の私は足の裏の皮がベロッとむけました(半分は空手の稽古のせいです)。

11月

人事系のあれやこれやに奔走します。法務と人事、使う発想がやはり違うと思うのですが、学生の時間割のように切り替わるものではなく、法務の緊急相談(「夕方出稿なんですけど、景表法問題ないですか?」)の直後に、フロアでは話せないセンシティブな人事相談が舞い込んだり。なれない人事系の判断だけでなく、法務業務の判断のキレが悪くなり、悪循環の中にいる自分を認識しながらも打開できないモヤモヤに包まれていました。そんなとき、Msutさんの「切り替えの『キレ』を読み、「あるある!」と心の中で大きく叫びました。

12月

はっ!と気づくともう師走。「法務系Advent Calendar」の季節で年末を感じます。


こんなドタバタの1年間でしたが、大きく2つの要因がありました。一つ目は予想外の危機、すなわち外部からの脅威に対する見積もりが甘かった。市場の変化スピードが上がるにつれ、外部からの脅威も増えていくことに無頓着であったと深く反省です。2つ目は自分のキャリアに対する見通しが甘かった。管理職見習いを数年経験した後に管理職になれたら隣接業務から少しずつ業務範囲を広げていく…なんてストレートに進むものではないと実感しました。そして、プライベートでは、小学校のPTA役員をついに引き受けたり、3歳の次女のクループ性の酷い咳のためにずっと抱っこして看病する日々が続いたり、さらにそんな中でも朝RUNや空手を始めたり。



振り返れば本当にぐだぐだ過ぎる1年でした。が、ぐだぐだの中でしか得られない、自分自身に対する強烈な不甲斐ない思いやかっこ悪さを痛感できたことは、年初に立てた目標を違う形で実現できたようにも思います。また、私がぐだぐだだと、メンバーが成長します。事業部門の管理職から法務メンバーに対するお褒めをいただく機会も増え、この点は本当によかったと思っています。
法務にこってり関わることのできる時間が減ってしまったことが悔しくもあり寂しくもあるところですが、2016年は“予想以上に、予想外のことが起きるはずだ”と肝に銘じて、肩肘張りすぎずに、さらに不格好に過ごしたいと思う、12月なのでした。
ぐだぐだな1年を締めくくるに相応しい(?)、ぐだぐだエントリでありました。