メールを書く。

産休開始からもうすぐ4ヶ月。娘もあと数日で3ヶ月。そろそろ業務上のインプットをしたいと思うものの、エントリにあげられるほどのネタにするには、まだまだ余裕がありません。ということで、今回のエントリもまたしてもメールの書き方に関するインプット不要の抽象的なネタです…。


なぜメールの書き方をわざわざ? 契約レビューを例に、リスクの低減策実行の流れをざっくり書くと、以下のような感じでしょうか。図にする必要もないのですが、新人君用にと。

どれだけ素敵な契約レビューをしたところで実際に交渉する事業部の社員がレビュー通りに交渉し、実行しなければリスクを低減できるわけはなく。コンテンツ(レビュー内容)が素晴らしくても、うまく伝達しないと業務の目的は達成できません。
入社当時の一人法務の私、1番悩んだのはメールの書き方でした。新社会人として一般的なビジネスメールを書くことにも四苦八苦であるような社員が、目上の方に“あなたのビジネスにはこんな落とし穴が…”といったメールを書くのですから、内容はもちろんのこと言葉遣いなどの形式面で非常に悩みました。一本のメールを打つのに午前中いっぱいかかったりということもあったり。*1 いかに自分がペーペーといえども、一人法務や少数法務の場合には偉そうなメールを取締役や部長に出さざるをえない状況に否応なしに巻き込まれる訳です。後任君もきっと悩んで立ち止まっているに違いない…。


そんなことから、法務から事業部への伝達手段(図の赤矢印部分)であるメールの書き方について一度まとめてみようと思いましが、思い立ってから早2ヵ月。そんなときにSabosanさんのこんなエントリが。
http://kigyouhoumu.seesaa.net/article/260625319.html

結局のところ、メールを書く際には、読み手の立場にたって考えることが重要なのだ。書き手はそれを常に意識しておくことが大切ではないだろうか?大抵の場合、メールを読めば、本人の頭の良さ、気配り上手か否かについて、おおよそわかるものである。

というところ、まさに!といったところです。*2


さてさて、メールの書くときに個人的に気をつけていることをまとめてみました。

■WHY? 〜そもそも、なぜメールするの?

法務のミッションがリーガルリスクの低減による利益増大やブランド価値の向上にあるとしたら、法務で検討したリスクの低減策を実行に移す必要があります。が、実際に低減策を実行することは事業部であることが多いため、低減策を実行してもらうための説明・説得のツールとしてメールを使うわけです。
こう書くといたって当たり前のことですが、法務業務に慣れてきた頃、「契約書に変更履歴・コメントを加えたメールを送ること」自体が目的化することに陥った時期がありました。口頭で伝えてもリスク低減できるならばメールに悩んで時間をかける必要はないのに、“いかに納期通りに添削ファイル付きメールを送るか”に焦点を当ててしまったのです。
とはいえ、一度に同じ内容を複数人に正確に&効率的に伝達するためには社内クライアントへの伝達の手段としてメールを用いることがやはり通例だと思います。

■WHAT? 〜何を伝えるの?

依頼の内容にもよるのでしょうが、法務への相談への返答メールとしてはリスクの内容とその低減策といえるのではないでしょうか。「そのビジネスにはこんなリスクがありますよ。」という前者だけで終わってしまうと陰で“お役所法務”と言われてしまったりします…。

■HOW? 〜どうやって伝えるの?

で、悩ましい“どうやって”の部分。メールを送ることはリスク低減策を実行してもらうための手段だとすればリスク低減策について「理解してもらい、納得してもらい、実行してもらう。」ことなのかと思います。

1. 理解してもらうために
(1) 結論・ポイント・大枠をまず伝える
新規ビジネスの法令抵触性の相談ならば新規ビジネスの実行はOKなのか、NGなのか。
契約の相談ならばその契約の相場感としてハイリスクなのかローリスクなのか。以前は契約案件ごとにAA〜Cのリスクランクを設定していましたが、AAだから法務がSTOPしてもよいというものでもないため、わかりやすいキャッチーな表現にした方がよいのかなとも思っています。
ccに設定されているクライアントの上司や関連部署のスタッフは添付ファイルを開いてわざわざ詳細を確認してくれないでしょう。「眺める」だけのメールでも事案の相場感がわかるように事案のポイントを“見やすく、端的に”記載するようにしています。具体的には、ポイント部分はフォントサイズを12ptにして、ノートPCの画面の半分くらいに収まるように。


(2) 型にはめる
だらだらと長い文章が続くメールは読みにくいことこの上ない。法令抵触性相談ならば結論→理由→代替案→参考資料という型にはめています。「…本件ビジネスは法令に抵触するリスクが低いとは言えないものと思慮致します。」は弁護士からクライアントへのメールでは許されるかもしれませんが、法務スタッフがやったら「は?」となること必至。
Sabosanさんのエントリの内容にも類似しますが以下のような感じで型にはめてしまいます。

  • 結論:本懸賞企画そのものは法令違反の可能性が高くNGですが、代替案を採用すれば同趣旨の懸賞は可能です。
  • 理由:企画の▲▲部分が景品表示法(x条:…に関する規制)に違反します。(●年●月●日 消費者庁確認済)*3
  • 代替策:以下の3案をご提案しますが、法務としてはA案をお勧めします。
  • 参考:消費者庁HPに類似FAQが掲載されています。


だらだらと長くなってしまったので今日はこの辺で。なんだか今日のエントリは単なる前置きでしかなかったような。。

*1:まだまだ依頼が少ない時期だからこそ、時間があり過ぎて必要以上に悩んだとも言えますが。

*2:休職前に社内で行っていた「朝カフェ」(始業前有志勉強会)で「文章術、超入門」なんてテーマで発表したワタクシですが、「メールは書くものではなく読んでもらうものです。」なんて偉そうに発表したものです。

*3:もちろん、行政の見解がすべてではありませんが。