続・メールを書く。

前回のエントリから随分日が経ってしまいましたが、一応続編です。

■HOW? 〜どうやって伝えるの?

1. 理解してもらうために
(3) 専門用語を使い過ぎない。
専門用語を使うとそれなりの文章となったような気もするのですが、依頼者に対し正確に伝わらなければ意味がないわけで。「遡及的無効となります。」なんてたいした表現ではないですが、漢字が多いだけで読む気が失せる人もいたりして…。


2. 納得してもらうために
1.が「頭で理解する」ことを目的とするならば、次に目指すは「腑に落ちる」でしょうか。「言ってることはわかったけど、法務が言うほどリスキーなの?法務の言うとおりにしていたら交渉が難航するから、今回はリスクをしょっていくよ。」と交渉すら行わずに取引がスタートしてしまえば、法務業務としての成果はゼロかもしれません(まったくのゼロではないでしょうが…)。
添削ファイル付きメールを送ることそのものではなく、受け手が「うん、確かに言う通りだよね。法務の修正案で行けるようトライしてみるよ。」と思ってもらうことを目指すべきなのかなと思います。さて、どうやって依頼者の「腑に落ちる」にたどり着くか。


(1) 具体的に伝える。

  • リスクの数値化

利益に大きな影響を与えるほどのリスクがあるのか否かをなるべく数値化するようにしています。
「損害賠償リスクが高いため、この条項を修正してください。」ではなく、「仮に本件でリコールが発生した場合、先方の契約案がそのまま適用されると瑕疵のない製品についての予防的交換費用、そのための人件費、●●等がすべて当社負担となり、概算でも●●円となります。そのため、本件が赤字取引となる可能性もあります。」などなど。

  • 自社過去事例・他社事例

やはり誰でもトラブルは避けたいもの。「先月、別の課で契約書に●●の記載をしておかなかったために、在庫を販売できなくなった事例があったんですよ。」とか、「今回の広告と同種の表示について▲▲社が去年消費者庁から指摘を受けているんですよ。」と伝えると担当者もそれはマズイ!と思ってくれることが多いです。やはり近い事例の方が耳を傾けてくれ、事業部門も一緒に代案を考えてくれるように思います。


(2) 相手の立場に立ったひとことを。
ビジネスの最前線にいる社内クライアント。納期や売上といった数字に追われているのですから、間接部門が正論ばかり伝えても、心に響かないものだと思います(←かなり自戒を込めて)。 「相手の立場に立ったひとこと」なんてもちろん正解はないのですが、法務発のメールは内容もキツく、そして丁寧さ・完璧さを目指すあまり慇懃無礼になりがちではないかと思います。社内メールでの慇懃無礼表現、相手からすれば「他人事」の臭いがぷんぷんで、時々大きな摩擦へと発展いたします…。
ここは前回のエントリ1.(2)で書いた「型にはめる」と矛盾するようですが、型から外れる方が「そうだよね。」となるのではと。メールテンプレートを用いていつも同文の回答だとレビューマシーンから回答が届いたといった印象になりそうですので、自分なりのひとことを足そうといつも思っています。正確な敬語、失礼のない言い回し…確かに大切かもしれませんが、「思い」のない文章は人の心に届かないように思います。うまいメールよりも、真摯なメールを。
「年末商戦に向けた取引ですから1日も早くお返事しようと思いましたが、正直なところ今回の契約書はとても厄介でした。リスクを抑えつつも早期に締結できそうな妥協案を複数案考えましたので、後ほどご一緒に検討させていただけませんか?」
「経験が浅いため、うまくお伝えできていない箇所があるかもしれません。ご不明な点がありましたらいつでもダッシュでご説明に伺います。」
とかなんとか?



…とここまで書きつつも、メールの書き方に悩まずにささっとリスクコントロール案を伝えられるのがベスト。普段からの信頼関係があれば耳の痛い内容でも心に伝わりやすいでしょうし、常に自分からの直接の対話を欠かさないことがメールを書くときにも活きてくるのかなと思います。