地方の法務系勉強会のレシピ 〜地方でも“法務あるある”を。

先日、時折お世話になっている某社主催のセミナーが地元で開催されました。地方での法務系セミナー、非常に珍しいのです。某社の発行する某誌編集部の担当の方とはメールと電話でだけのお付き合いでしたので、ご挨拶だけでもとセミナー後懇親会の場へ行ってまいりました。
すると、知った顔がちらほら。地元でこじんまりと開催している法務・知財系勉強会のメンバーが数名いらっしゃったのです。最近どうですか?いつ復帰ですか?などとお互いに近況報告。大都市では他社の法務スタッフと顔見知りということは当たり前なのかもしれませんが、勉強会を始める前はこうはいきませんでした。懇親会でのちょっとした場面だったのですが、職場復帰したら勉強会をまた進めたいなと思ったヒトコマでした。

地方での法務パーソンの悩みに、法務市場(?)が小さい故、口コミの情報が得にくい、切磋琢磨する相手がいないということがあるのではないかと思います。そこで、法務パーソンが少ない(というか、どこにいるのかわからない)地方での法務系勉強会をつくった一例としてクックパッド的に「レシピ」として振返ってみようかなと思います。



材料

●自分:無謀にも自分一人の思いつきで始めたのですが、やはりえいっと始める自分が一番必要だったりします。
●理解ある上司:業務上の成果に直結しない活動を快諾し、支援してくれた上司。やはり後押してくれる存在は大きいです。
●「ハブ」となる存在 〜大学:大学という存在にある種のハブになっていただき、大学の民間企業向け講義を受けるような感覚で*1法務パーソンが集まる形で始めました。また、地方では法務専門部署を有する企業が多くないため、法務パーソンを見つけることがひとつのハードルです。そこで、教授に法務業務に関わっていそうな卒業生に声をかけていただいたりしました。会の立上げ以降もテーマ設定や講師の紹介等々本当にお骨折りいただきました。
●同志:年に数回の勉強会でも一人での運営はしんどいものです。「それ、いいよね!」と前向きパワーで発進を後押ししてくれ、発進後は運営を分担してくれる同志が1人でもいると大きな力となります。

作り方

こんな風に作ってみました。(ちょっとカタイか。。)
1. 地元大学に相談・連携:最初に面識のある教授に相談した上、“企業はこんなところに困っています、大学のこんな力を借りたいです”と教授陣にプレゼン。今考えると怖いもの知らずだな…。
2. メンバー勧誘:総務・法務兼任という方も多かろうと、株式懇話会の総会にてプレゼン。これも今考えるとカタ〜イ場によく飛び込んだよなと思えたりします。参加メンバーを獲得することが当時も今も一番の課題だと感じます。取引先や学生時代のつながりに声をかけてみたり、ビジ法1級の試験会場でナンパ(?)してみたり*2
3. 初年度運営 〜講義スタイルメイン:メンバーの業種・規模・所属部署など様々なのでテーマ設定に苦しみました。業種や業務内容が違えども何か少しでも具体的にお土産になるものを!と思いながらコンテンツを考えました*3
4. 毎年カイゼン:講義スタイルだけでなくゼミ的発表にしたりワールドカフェを取り入れてみたり。
5. 「会」としてステップアップ 〜名称、ロゴ、規約作成:これらがあった方が入会しやすい企業もあるらしく。

コツ・ポイント

「同志」を集めることが一番のポイントのように思います。「法務」にこだわり過ぎず、知財はもちろん、総務もその他にも広く声をかけてみたら貴重な出会いがあるかと。

このレシピの生い立ち

一人法務→少数法務の数年を経てスキルアップに悩むものの、まだ卒乳すらしていない子供を育てる身。泊まりの出張ですら難しい状態。毎期の目標を立てる際に、地元でスキルアップのために何かできないか…と思ったのがきっかけです。






5年前と今ではSNSの普及率もまったく異なるため、仲間を集める状況はもっと簡単になっているかもしれません。ただ、こうやって振返ってみると、当時はとにかく地元の法務パーソンを探すことが難しかったので、「ハブ」の力を借りて形から入るという方法でよかったのかなと感じます。このレシピのおいしさとしては、一人法務ではわからない業務上の“相場感”を少しは感じられるようになったこと、他社の若手の頑張りに触発されて気合いが入ること、“法務あるある”的な愚痴で笑いあえる仲間に会えたこと、などなどたくさんあります。
今後はロースクール生との交流の場としてみてもよいかも、メンバーがもっと参加・発信できるようにこちらのLTを真似してみたい、英文契約レビューゼミを毎月開催するなどの基礎学習的な分科会っぽいものも開催したらよいかなとか、思いだけは色々浮かんでしまいます。とはいえ、来年のテーマは「ゆ(ゆるり、ゆっくり、ゆったりと。)」。欲張り過ぎずちょっとずつ試してみようと思います。

*1:講義そのものを委託した訳ではないのですが。

*2:勉強会にナンパした相手、高校の同級生だったときにはびっくりしましたが。

*3:資料にチェックリスト、自社のレベル判定シート、参考URL集をつけてみたり。