法令改正、そのときどうする!?

来年からの産休・育休に備えて順調に引継は進んでおります。
…と書けたらどんなによいでしょう(苦笑)。11月から後任への教育や年末案件に追われており、落ち着いて業務引継ぎをすることがままなりません。メイン法令について現状の課題と今後の対策をすべて伝えておきたかったけれど、いかんせん時間がない。ということで、後輩君たちには法令改正時の対応アクションのチェックリストだけをざっくり伝えることになりました。
大手さんは法令改正のDBやら情報配信システムが充実していると思いますが、以下は少数法務で人力で回しているケースを前提に、法令等の改正時に行うべきアクションを荒々とまとめたものです。自社はこんな管理をしているよ!ここが抜けているよ!という情報・アイデア、絶賛募集中でございますw

アクション目的

  • 法令違反リスクの回避
  • ビジネスチャンスの提案
    • 前者は当たり前ですが、それだけで終わらないように後者を意識しています。とはいえ、後者が難しいですね。単にセールストークに使えるというだけではなく、新規製品の提案等までできるようになりたいと日々考えておりますが。。これができるようになると一歩先行く法務パーソンになれるのでしょうね。
  • 既存リスクの見直し
    • 裏目的(?)として普段から対策不十分だと感じていたリスク項目についての注意喚起タイミングとしても利用しています。営業秘密侵害罪が導入された際に、社内ドキュメントの秘密表示のルール化を明定する契機として利用したり。普段から温めていたことを法令改正をチャンスととらえて実行に持っていくということも目的の一つと言えるかもしれません。

アクション手順


1. 情報収集
一時、「法改正情報メール」が自動で送信されるシステムの導入を検討したこともあるものの(→こちら)、試験導入直前で経費削減命令が発出されまして、あえなく断念。当社は規制業種ではないだけに、今のところ人力で管理しています。人力管理の情報源は以下。
成立情報は目につきやすいのですが、確定した施行日を見落とさないように要注意。

  • 法律系雑誌:Business Law Journal、ビジネス法務、NBLなど。忙しくて積ん読状態になりがちですが、法改正情報だけでも先に目を通すように注意!(←自戒。。)基本的にはこれら雑誌の発行月にあわせて対策をとっていけば大きな抜けは起きないはず(かな?)
  • メルマガ
  • SNStwitter&法務系ブロガーさんたちのブログ。最近は特に法務・法曹の方々のツイートから自社が落としていたガイドラインを見落とすこともあり、欠かせないものになっています。

2. 概要把握
情報を収集したら、まずは概要を把握すること。影響度によっては早期に経営層への報告が必要になりますが、その際には「パッと理解、グッと興味。」がポイント。法令情報について、それほど興味が高くないのが事実ですから…。その際に使えるのが概要をまとめた1ペーパー。
文字ばかりだと「パッと理解」には遠いので、法案成立時の概要資料に記載されている図を活用しています。これ、後日Webから落ちることもあるようで、かならずローカルに保存するようにしています。



3. 影響度判定/概要周知
日々、小さな法改正がなされる中、自社に影響のあるものなのかどうかを判定することが必要。低リスクである場合に大きなリソースを注ぎ込む必要はないはずなので、以下の観点でチェック中。
(1) 影響度判定

  • 注目度:社会的な注目度が高いか否か。島田伸介氏の引退騒動→暴排条例のように。
  • 効果:罰金額、措置命令等の内容。罰金額には社内の皆さん結構注目するようで。
  • 対応コスト:情報システム改善等の必要性、従来フローカイゼンの必要性

(2) 概要周知
役員会議にて法務スタッフが直接報告+イントラネットで全社に告知。これを受けて、カイゼン対象となる部署を抽出する。この際、以下の点に留意。

  • リスクの相場感
  • ビジネスメリット:特に営業部門役員に伝える際には法改正によってビジネスチャンスがあるのかどうか、セールストークとして使えることとなるのかどうかを報告する。
  • スタッフへのフォロー:「こんな業務をしている方はこう変わりそう!」をなるべく具体的に提示し、担当者にフォローメールを送る。
  • 法務メルマガでも告知:掲示板は見ないがメルマガは見るという人も多少はいると信じて、違う媒体でも紹介。


こう整理してみると、[役員へのプレゼン+現場スタッフへのメール]という方法で上下から挟みこんで法改正対策に興味を持ってもらおうとしているということですね。



4. 詳細把握・詳細周知
改正法成立後、施行までにガイドラインが出て詳細が出されることが多い。
(1) ガイドライン案→パブコメ→確定ガイドラインの確認:パブコメへの回答内容も要チェック。
(2) 所轄官庁主催説明会への参加:早期に定員に達することもあるので要チェック。

  • ほとんどの場合施行日までに1度しか開催されないため、HPで開催を必ずチェックする。開催日が不明な場合は直接問合せる。
  • 悲しいかな地方の場合、地元説明会がない場合も…。地元開催がない場合、団体からの応募であれば受け付けてくれることもあるため、地元団体を通しての開催を要請する。

(3) 社内説明会の開催

  • 全社規模の改正の場合には全社説明会、特定部署の場合には関連部署と対策検討会。法務が言うことだけやるよ、にならないように“共同で対策を練りましょう”という場になるように留意しております。

5. カイゼン
上記1.〜4.を踏まえて、施行日までに必要なカイゼンを行います。ここは部署別にきめ細やかに。最近は各部署の業務フローを大カイゼンするというほどの大改正には直面していませんが、過去の例では個人情報保護法の成立、下請法の適用範囲拡大の際には何かと大変でした。。
(1) 部署別キーマンヒヤリング
(2) 業務フロー上のカイゼン事項抽出・カイゼン案の提示

(3) FAQ集の作成:説明会後に寄せられる質問を所轄官庁に確認しつつ、社内イントラに公開。
(4)ドキュメントチェック:契約や規約の変更が必要な場合はまさに法務の出番ですね。



6. フォローアップ
ここまで行っているケースは多くないのですが、本来は十分なフォローアップがサービスの品質向上に不可欠ですよね。提案したカイゼンは現場にて運用できるものなのか、想定したリスク以外にトラブルはなかったのか。
一応、施行後1ヵ月後、6ヵ月後、1年後にフラグを立ててチェックするようにしています(マニュアル上は、ですが。)

実際には1.〜6.をアクションアイテムに分解したうえで法務イントラ内で表形式で管理し、法改正情報を取得する度に表ごとコピー、アクションを消込みしていくというように管理しています(もとい、しようとしています)。新法成立なのか、法の適用範囲拡大なのか、ガイドラインの改定なのかという改正の種別によって各アクションの要否まで管理しておいた方がよいかしら。これはお休み中にブラッシュアップしよう。
契約や法務相談は受け身仕事なのに対し、法令改正対応は誰からも依頼が来ない仕掛け仕事なので、依頼案件に追われて対応が後手後手になるということが目下の課題ですね。