画する。
メーカー法務の私にとって、サービスは難敵のひとつと言えます。モノがないということは、サービス仕様と顧客との期待値にギャップが生まれることがリスクになり得るのですが、それ以前に社内での認識の相違の方が大きいように思えます。なので、社内でサービス案件を整理する場面をイメージしながら、自分の思考をちょっと整理してみようと思います。
モノにおけるハードウェア比率からソフトウェア比率が高まるにつれ、アプリケーションにおいては規約やプライバシーポリシーなどが重要であるという意識は社内でも徐々に定着してきました。が、会社全体が元々ハードウェアメーカーエンジニア思考なので、サービスになると、なんというか、まだまだ素人感が出てしまう…。
ただ、この“素人感”こそが大事であり、こんなこともできたらいい、あんなサービスも…とわいわい語り合うある種のお祭り感を残しながら、キモを落とさないように交通整理をし、そのサービスが狙っている価値の提供を阻む壁を目の前に置く必要があるなと感じているこの頃です。
法務としては、[(Web)広告+申込導線記載事項+利用規約]の三位一体で無体を有体に格上げし、期待と実体のGAPを埋める作業を粛々と進めていきます。そこで、無体であるサービスを可視化するには、“角を決める”という行為が必要なのかなと最近感じています。
角はひとまず、3つか4つ。
角の内側が、サービス範囲。角の外側が、免責範囲or オプション範囲。すなわち、角をつないだ内側の面積がサービスとして対価を請求できる範囲。規約というと「免責、免責!」と叫ぶ人もいるのですが、その「免責」ではなく、私は「面積」をイメージしています。まずは何をユーザーに約束できるのか、“できる/できない”を分ける角を決めていかないと。もちろん、免責=できない範囲を考えることで、角を決めるという方向の思考と行ったり来たりしながら。もし、めっちゃとがっている形になったら、それは新しい視点での検討が必要なサービスなのかもしれない。
このできる/できないの視点はいくつかあるけれど、
- 法律
- 常識(組織ポリシー?)
- 技術
- 外部要因
- コスト
などを考えます。
抽象ではイマイチわかりにくいので、自分がユーザー側に立つサービスで考えてみる。煩雑な契約書管理。これを外部にお願いできるサービスがあったならば。
あえて整理せず、思いつくままにあげると…
- 原本そのものも保管してほしい。確実に。ファイリングすら面倒。
- PDFファイルはいつでもどこからでも見たい。
- と言いつつ、誰でも見られるのはNG。参照権限を多段階で設定したい。
- PDFファイル自体にも自動で鍵をかけてほしい。
- PDFファイルや管理データがクラウドだけだと、不安。人質にとられるようなもの。一定期間ごとにローカルに自動保存したい。
- 顧問弁護士とDBを共有できたら、トラブル発生時に都度セキュリティに配慮しながら送らなくてもいいから助かる。
- 契約の更新管理は必須。ライセンス契約においては、ほんと、必須。ここをミスると事業上のインパクト大。
- 交渉→決裁→押印→管理までがワンストップサービスだとよい。ここの情報の整理(一致性の確認)に結構な時間がかかるんです…。
- 契約概要+リスクが簡単に可視化できたらいいな。
- 締結契約全体のリスクの変化&傾向が分析できたら最高。でも、なんちゃってではなく、価値ある分析じゃないと。
- 売上/調達等の上位取引先だけでも、毎年契約上のリスクを再検討できたら、いいのに。
- 経営情報と取引先DBが紐づいたらなおよし。
- 上記契約について、定期的に契約変更方法のアドバイスを自動で送ってくれるとか?
- 何だったら、AIが定期的に自動で契約変更の交渉メールを相手企業に送ってくれるとか…。
- 他言語の契約は和訳が自動生成されたら本当にありがたい。
- 法人番号で同期とって、社名変更や組織変更が自動化できないものかしら。信用情報×契約リスクから、対策案(変更覚書案)も自動で送られてくる世界。
などなど、ワガママなユーザーの思考からすると、角になり得るのは、個人的には以下の3つ。なんだか当たり前のことだけど。
- 確実な管理であること
- 契約をしっかり活用ができること
- 楽になること
もちろん、価格が採否の決め手ではありますが、上の雑多な要望をすべて実現できるサービスなら、上司に採用を強く訴えます。
雑にイメージすると、こんな感じでしょうか。本当に、ささっと書いた雑なイメージですが。 求めることが違う以上、各社各様の形になるんだろうなと各種リーガルテックのデモを受けながら感じていました。実際にはもっと凸凹でしょうけど。
上記のワガママな要望を書き連ねてみると、今までやってきた法務の仕事の一部は確実に自動化されていくのだろうという思いをあらためて強くしました。その一方、非定型なケースについてまで機械的な判断になることの怖さを、便利になりすぎることで失うものへの漠然とした不安を感じます。そして、思考の対象を今までとは違うフィールドに持っていかないといけない…など、期せずしてこれからの法務の仕事というものを再考する機会になりました。
本エントリを書いてみて、法務の仕事は、ふわっとしたビジネス案件の、パズルの外側を決める=外郭を画することでもあるのではないかなと思っています。
徒然なるままに書いてみると、自分がどこに躓いているのかなど整理できるので、2020年は自分の思考の整理のために、ちょっとずつ、ブログを更新しよう(たぶん。)