為末大「日本人の足を速くする」

実際の私を知っている人にはそうは見えないだろうけど、中学時代は陸上部でした。しかもしんどい中長距離。

読了して、真っ先に思ったこと。それは今度陸上競技場に行ってみよう!中学生のレースでも高校生のレースでもいいから、見てみよう!ということ。これって著者の思うところにまさにはまっているのではないかしら。
陸上競技、確かに一度にトラックとフィールドでいくつもの競技が同時進行しており、慣れていないと面白くないかもしれない。ただ、ちょっとしたポイントを知っているだけで少しばかり楽しめたりもする(ような気がする)。
私の中学自体の種目、800m。傍目からは短距離に比べるとなんて遅く走っているんだろうと見えるかもしれない。でも、走っている人は走っている間ずっと全力疾走なんですよ、気分的に。もちろんずっと全力疾走ではないし、実際駆け引きもあるんだけど、これがもう、本当にツライ。当時不真面目部員の私は「距離が長くなればなるほど手抜きポイントがあるので楽なんです〜♪もっと長い距離を走らせてください。」などとつぶやいて顧問に呆れられたっけ。
地方の大会レベルでは遅く見えちゃう800だけど、全力疾走の中から振り絞って最後の100を死に物狂いでラストスパートかけていると思うと、ちょっと見方が変わりませんか?



さて、本の内容は…速く走るための走り方&トレーニング法に始まり、コーチを持たない著者が最初にメダルを獲得し再度メダルを獲得するまでにどのようにハードル競技および自身を分析し、トレーニングにチャレンジしてきたかという内容。全体を通して「日本人の足を速くすることにより日本のスポーツシーンを根底から変えたい」という陸上への熱い思いがその先に、そして根底にあるようです。

気になった箇所をピックアップ。

リスクを覚悟して攻める
大きな成果を得るためには、それに見合ったリスクを引き受けなければならないのだ、という覚悟を腹に持ち続けていると、いざというときでも、あまり余計なことは考えないでいる度胸みたいなものがついてくるように思います。

選任コーチ不在の理由
どんなに優れた指導者に恵まれたとしても、自分の思いとのギャップは必ず出てくるでしょう。そういう部分で迷ったり葛藤したりでムダなエネルギーを使うくらいなら、あらゆるリスクを自分で引き受けて、自分の思い通りにやったほうが気持ちが集中できますし、覚悟が固まります。(中略)
自分には何が足りないのか。それを解決するためには何をすればいいのか。(中略)私は、自分で考えるという最高に面白い作業を、もったいなくて人に渡したくはないのです。

コーチ不在で苦楽を一人で引き受けること。考えることを一人で引き受けること。これを「面白い」と表現できるところにこの人の強さがあるのかと。この後の世界陸上、オリンピックにて戦績は振るわなかったが、現役続行中。今後の活躍を見てみたい。


当たり前だが、著者にとっては陸上競技が仕事なのであるから、ビジネスにおけるリスクマネジメントが当然陸上競技にも当てはまる。自社の強みは何か、市場のトレンドは何か、とるべきリスクは何か。わが社、突き詰めて考えているのだろうか。とはいえ、まずは自分の仕事に置き換えて実践してみよう。


日本人の足を速くする (新潮新書)

日本人の足を速くする (新潮新書)


とにもかくにも(?)、暑くなる前に走ってみよう。陸上を見に行こう。