契約レビューのステップ

諸々の事情もあり、週に一度は会社後輩君たちの状況を確認する電話を入れているのだけど、どうも案件のスケジュール感が合わないときがある。そこまで進んでて、どうして依頼者に返答できないのかなと「?」がよぎる。考えてみると、法務チームにて契約書レビューのステップというものを共有できていなかったような。単に「そこまで」が共有できていないがためのズレと誤解。これはチームをまとめる側の責任ですよね。これまでは隣に座っていれば大体の雰囲気がわかるのであらためて文字にする必要もなかったけれど、よい機会なのでまとめてみました。


ざっくり書くとレビューのステップ以下のような感じでしょうか。


1. 各部からの依頼
メールが基本です。急いでいる場合、あまりに簡単な案件の場合、また逆に複雑すぎてまとめることすら難しい場合などは「ごめん、ちょっといいかな?」とデスク脇で話が始まる場合もありますが。少し前に取引先情報や依頼部署でのレビュー結果等々を記載してもらうフォーマットを作ってみました。フォーマットについては功罪ありますが、それはまた別の機会に。
2. 概要把握
メールから案件概要を掴む。フォーマットのおかげで掴みやすくなったケースもあります。“端的にいうと、どんな案件?”ということがわかりやすくなりました。フリーフォーマットだと文章力の差がありすぎて、どうにも掴めないケースがあったり、ファイルだけ飛んできたり。
3. スケジュールあわせ
案件の大体の難易度がわかれば他案件の込み具合・チェック者のスケジュールなども考慮し、回答納期を設定します。このときにビジネス開始時期を依頼者に確認しておくことが必須。毎度“ASAP”という方もいれば、社内稟議手続の考慮が抜けていて締結期限に間に合わなさそうなスケジュール感の方もいたりします。
4. ラフレビュー
取引概要のレベルで契約書ファイルをざっと読み、要修正項目とその方向性、不明点・疑問点を抽出するとともに案件のポイントを探り、リスクの大枠を仮定します。ここでは修正文言までは詰めきらず、とにかく時間をかけすぎずに最後まで読み通す感じでしょうか。
5. 詳細把握:周辺情報確認&ヒヤリング
取引先情報を収集したり、関連法令の確認をした上で、依頼者に直接ヒヤリングをして詳細情報を収集します。ここが詳細レビューのベースになるのでしっかりと。ヒヤリングについての詳しくはこちら
6. βレビュー
5.で収集した情報に基づき、契約書を実際に修正していきます。具体的な修正文言の提案とその理由を丁寧に記載し、各修正条項の優先順位も設定するなど交渉戦略も検討した上で返答メールまで作成し、“完成の一歩手前”状態にします。ここでは他の類似契約書や同社との過去契約書との比較など、裏取りというか穴をなくす細かい作業も行います。
7. 他者チェック(1.5次チェック/2次チェック)
上位者にてチェックします。ちなみに、同列メンバー同士の平行チェックを1.5次チェック、上位者チェックを2次チェックと読んでおります。難しい案件や初めての契約類型の場合にはβレビューではなくラフレビューの段階で他者チェックをすることもあります。
8. GM版作成&返答
7.の結果を受けてレビュー内容やメール内容を修正し、法務レビューのGM(ゴールデンマスター)版の完成。依頼者への返答となります。まぁ、「ゴールデン」といえるのかはさておき。
9. 口頭フォロー
メールだけでなく、必ず口頭フォローを入れます。文字では伝えきれないことが必ずありますからね。



簡易案件では端折る場合もありますが。
人によってレビューのステップは様々でよいと思うし、チーム内でガチガチに固める必要はないと思うのですが、チームメンバーによって「ラフレビュー」の解釈がばらばらだったので、回答までのスケジュール設定がどうもかみ合わなかったことは事実です。レビューの各ステップにおける定義を固めると「●日までにβレビューを終わらせる予定です。」とか、「今回は難しそうな案件なので、ラフレビューの段階で方向性をシェアしよう。」などの会話が生まれます。
今の自分の状況もそうですが、これからの働き方としては常にメンバー同士が顔をあわせるとは限らないのでしょうね。そういったことを考えると当たり前のプロセスを文字にし、定義を共有しておくということは思ったよりも大切なのかなと感じました。