BLJ「震災法務」を読んで。

出張帰りの電車内にてようやくBLJ6月号の「震災法務」を読むことができました。

3月の地元企業間勉強会では急遽テーマを「リスク管理〜災害リスクを中心に〜」に変更し、各社の震災直後からの対応を共有するための情報交換会としたくらいで、このテーマは“待ってました!”であり、本当にありがたい。*1

自身を振り返ってみるに、震災後は法務というよりは総務の一員として対応していたという面が大きい。法務として行ったことといえば主要取引先との契約内容を確認した程度。誌面で以下のように言及されているように「待ち」であった感が否めず、あらためて反省するとともに今からでもギヤを入れ直して行動に移したいと思います。


企業法務戦士の雑感 
でも引用されていらっしゃいましたが

P.26
法務部門としては、何が問題か、その解決方法は何か、といったことを平常時以上に、積極的、能動的に検討する姿勢が求められる。逆に、待っている状態では、存在すら忘れられかねない状況であり、それはその後の復興において法務部門軽視の風潮が根付きかねない危険を孕んでいると認識すべきであろう。

は胸に突き刺さります。



今からでも行うこと。

特集中にTO DOリストも掲載されていましたが、誌面の中かから私自身が即行したらよいと思われるものをリストアップ。

法務対応一覧の作成

  • 社内決済に対する暫定処置
  • サービス無償提供にかかる法的問題の確認
  • サービス停止等の中で法務的観点から追記すべき文言等の整備
  • 加入保険の条件確認 総務担当任せにしておかないように。

契約・約款内容の見直し

  • 不可抗力条項
    • 地震」「停電」の明記 担当者を悩ませないようにという発想はまさに首肯。
  • 再委託禁止条項
    • 不可抗力発生時除外の追記 意外と盲点かもしれません。
  • 約款
    • 免責規定 各種約款を本気で一度洗いなおしてみないと。

社内向け情報発信

  • 社内向けメッセージの発信
    • プライベートな相談については賛否両論でしょうが、顧問弁護士とのあるべき関係というものを再考させられました。「プライベートな件で相談したいことがあるんだけど、どの弁護士に頼んだらよいかわからなくて…」という社内からの相談、普段からちょこちょこあるのです。
  • FAQの掲載
    • 社内からの相談は多くないが、潜在的な疑問を掘り起こしてみる必要はある。

震災対応で気にかかったこと

「特別対応」の範囲

震災による機器の故障に対し、各メーカーでは無償修理などの特別サービスを発表しているでしょうが、その範囲は悩ましいかもしれない。厚生労働省の発表する「災害救助法適用地域」*2が現状と合致しているとは限らないのです。実対応としては“臨機応変”とするほかないのかもしれませんが公的機関の発表を超えての対応というものを考えておかないと、と実感。

「取引停止」の正当性

取引先が被災した場合、従来通りの取引を継続するということが一番の支援なのではないかと思うものの、復旧の予定が不明な場合には他社に乗り換えざるを得ない。下請中小企業振興法上、配慮すべき点はどこだろうか?
もともと「取引停止及び大幅な取引減少の場合の予告」については予告期間について特に定めがなく、罰則もないため、かつ今回は親事業者の責ではなく避けられない事態である等から大きな問題にはならないのかもしれませんが、通常は取引停止検討時には慎重に配慮をするだけにドタバタの中で置き忘れてしまっている点がないか、一度チェックしてみないと。

                            • -

被災していない、停電等の影響も受けない。そんな地域にいると自分は何ができるだろうかと焦り、短期的にできることに目が行きがちになっていたかもしれません。そう気づかされ、今、総務を中心として整備を始めた震災対応アクションの中で法務としての自分がなすべきことが具体的に見えてきた特集でした。

そして各社担当者の対応を見るに、いかに法務担当者として細やかに想像力を駆使するかがポイントであるということを痛感。普段から契約案件や新規事業案件にて、時には事業部門に嫌がられるくらいリスクを指摘している法務担当だからこそ、未曾有の事態においても想像力を駆使して先手を読んでの対応をしていきたい。

P.27
今回の東日本大震災では、多くの被害が発生した。いわゆる壊滅的な状況の中で、法務部門として何ができるのかを考えつくすことは必要である。そのためには、社内のリソースだけでなく、社外のリソース、特に法律事務所や同業他社または異業種の法務担当者とのネットワークがポイントになるだろう。これまで「ノウハウ」と称して、社外への開示を躊躇していたのであれば、企業法務の質の向上や、その「ノウハウ」のさらなる進化のためにも、積極的な情報交換と、いざというときのための人的ネットワークの構築が、法務部門と支店お危機管理体制のあり方の一つといえる。

自分のリソースを使ってできることを…ということは震災直後に痛感したことであるが、「自社の法務のリソースとして」に置きかえて考え直してみたい。

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2011年 06月号 [雑誌]

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2011年 06月号 [雑誌]

*1:にもかかわらず、アンケートに回答しなくて申し訳ありません…。

*2:http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000014j2y.html