「must時間」と「can時間」

2月の百万石ワールドカフェのテーマは「ワークライフバランス」でした。
コレ、2012年の研究テーマにしようと思っていたところなので、すごく参加したいのですが、何と言って出産直後。参加は到底無理なのでひとりワールドカフェ的に呟いてみます。ワールドカフェなだけに、感じたことを発散しているだけで、考えはまとまっておりません。


さて、この「ワークライフバランス」という言葉、多くの方が既に言われている通り、違和感があります。「ワーク」と「ライフ」の2つを天秤にかけるイメージですが、この2つははっきり切り離せるものではないはずだからです。
とはいえ、この2つを前提に考えてみたところ、現在産休中の私、他人からみれば100%「ライフ」な生活なのでしょうね。実際、産休が羨ましいと言われることもあります。ただ、実際は24時間休みなしの生活です。産後の体に鞭打ち、夜中も2時間おきにオムツ替え、授乳。子供が寝ついたのでようやく自分も寝ようかと思ったら吐き戻しで着替えやら何やら。そして、自分自身も産後のあらゆる痛みと戦います。これを書いている現在も乳腺炎と地味に格闘中…。本当に子供の月齢が低いほど、体力勝負です。

この時間を「ワーク」をしていないことをもって「ライフ」=私生活満喫中と言われると、ちょっと違和感を感じます。できることなら、24時間のうち1、2時間は…、週に1回は…と育児を離れて仕事をしたいと思うことも少なくありません。




じゃあ、ワークとライフではなく、何のバランスが大事なのでしょう?

今、おぼろげに感じていることは「must」と「can」のバランスです*1
子供をもつこと、それは夫婦で決めたことです。だから育児期間全体としては自ら選択して子育てができるという意味でcan期間なのだとは思います。ただ、育児時間は小さな命に対する責務を果たす時間でもあります。子が小さければ小さいほど、自分がこうしたい、ああしたいではなく、24時間小さな責任行使=must時間の積み重ねです。おそらく、介護に関しても同様、もしくはそれ以上にmustの積み重ねなのではないかと思います。


そうすると、働きながら介護や育児にフル稼働している方々というのは1日のうち大半がmust時間なのではないかと思います。実際、体調イマイチな産褥期の妻を抱えている夫の現在の状況は申し訳ないくらいです。定時ダッシュで帰宅し、保育園のお迎えに行き、帰宅後は夕飯、お風呂、子供達就寝後は残りの家事や風呂敷残業…座る暇もないほどです。


これに対し、趣味や習い事、ボランティアやNPO活動などに費やすことができれば、その時間は自らが選択して過ごす時間であるため、can時間であると言えます。
さらに誤解を恐れずに言えば、仮に独身で残業の後、帰宅後はTVを見ながらビールという生活ができれば、帰宅後の時間は自分で選択できる時間=can時間ということになり、介護や育児中の人よりも選択的な生活を送っているという意味でライフが充実しているともいえます。もっと極端に言えば、残業時間ですらcan時間です。終業のデッドラインを自ら決めることができるのですから。もちろん、育児や介護のために早く帰らなくてはならない社員の穴埋めを他のメンバーが残業によってカバーしてくれていることは重々理解しています。


ワークライフバランスで目指すところは、誰もが、すなわち育児や介護中の人、女性だけではなく、育児者や介護者をサポートしている人も含めたすべての人が自ら選択できるcan時間をコントロールできる状態ではないかと思います。
育児や介護中でも働きたいなら、働く時間はcan時間です。IT化で時間と場所を問わずに働くことは可能なはずです。そうすれば、育児者や介護者をサポートしている他のメンバーへの皺寄せが減り、他のメンバーのcan時間も増大することにつながりやすいでしょう。一時、「ワークシェアリング」が叫ばれていましたが、育児中の人、介護中の人、療養中の人、独身の人、婚活中の人…あらゆる人で「can time シェアリング」ができたらいいですね。


ライフステージによって、must時間が生活の大部分を占める時期があるのは仕方ないともいえます。でも、100% must時間では疲弊しまいます。育児の場合、もうひとりこどもを持とうという気持ちにはなれず少子化につながる可能性もあります。介護の場合は期間が決まっていないだけに疲弊度はより高く、就業の継続が難しいかもしれません。


誰でもが少しでも選択可能なcan時間を増やしていく施策を行政、会社、社会全体で進めていくことが真の「ワークライフバランス」なのではないかと思います。もちろん、一人ひとりが選択できる環境に感謝してmust時間に力を尽くすことが大前提ですけれど。
個人の選択的な時間が増えることにより、義務的な時間にも力を注ぐことができる。そんな好循環な社会になったらよいなぁと授乳時間に感じて書き殴ったエントリでした。

個人でできること、会社や行政に提案すること。今年は色々と考えてみよう。

*1:法務としては "should" と "may" かもしれませんが、伝わりにくいので「must」と「can」にしておきました。