プレゼン克服への軌跡 〜小心者が「イケル!」になるまで。

6年前。社内カイゼンコンテストの初回で発表をしたときのこと。緊張して声がこもりがちだったのか、TV会議で他拠点に接続されたディスプレイからは「聞こえませーんっ!」の声。終了に至るまでにさらに2回ほど指摘された。プレゼンの内容云々よりも、スタートラインにすら立てていなかった。*1


あれから6年。今回も社内カイゼンコンテストで「下請法講習会まわりのカイゼン」をテーマに発表の機会をいただいた。法務としては1対1の場面でも1対nの場面でも説得力を強化することが不可欠。法務講習を積極的に実施していくためにも以前からプレゼン強化は重点課題のひとつだった。社内朝カフェではプレゼンのたびに自分に裏テーマを課して、何度もチャレンジ。

苦手を克服するために、さらにステップアップするために

  • チャレンジを受け入れてくれる環境を見つける! 〜プレゼンを温かく受け入れてくれる場を作り出し、そこで「苦手」から「楽しい」へ!
  • 毎回テーマを決めてプレゼンする! 〜声の大きさ、スライドの作り方、ジェスチャーなど毎回自分にテーマを設定する。
  • 必ずフィードバックをもらう!

などなど地味なアクションを続けていた。


その成果もあったのか、なんとか入賞。テーマは地味だったのでプレゼンで加点されたと(勝手に)思っている。審査結果詳細の真偽のほどはさておき、他の発表者のプレゼンを見た後に自身がプレゼンに向かう際の心境は「ひとまずプレゼンについてはイケル!」だったのだから6年前の心境とは雲泥の差だ。

コンテスト終了後に、審査員であった顧問から感動したよとのお言葉を頂いた。もちろん評価5割増しくらいで鼓舞していただいたのだとは思うが、苦手分野についてお褒めをいただくことが素直にこれほど嬉しいものかと逆に感動させられた。それとともに プレゼントはうまくやることでも、伝えたいことを伝えるものでもなく、聞いていただく方の心を動かすために行うものなのかとはっとさせられた。



とはいえ、前よりも自分なりに進歩したというだけでプレゼンの出来はまだまだまだまだ。早めに今回の反省点を抽出しておこうと思ったときに図書館の新着図書で出会った本がこれ。


まさに今の心境にズバリのタイトル。書かれている詳細は以下のような従来の本とも共通するところが多いとも思われるものの、顧客目線とも言いうる聴講者目線での記述が多く、「どううまく伝えるか」から「どうやって聴講者の心を動かすか」にシフトしたい人にとっては参考になる内容も多いと思う。

わかりやすく〈伝える〉技術 (講談社現代新書)

わかりやすく〈伝える〉技術 (講談社現代新書)



心が動いた箇所をピックアップ。

  • 本来、プレゼンを得意とするのは、気が小さい人、心配性の人
  • 「どう話そうか」ではなく「どう届けようか」との意識改革が必要
  • 急発進、急停止、急ハンドルせよ 〜プレゼンの話術での敵は「単調」
  • 舞台俳優になれ
  • 「あなたの話し方は単調で抑揚が足りない」と指摘された場合、「あなたのトークには事例が乏しい」と指摘されている可能性
  • 聴講者が投資する時間に見合う「お持ち帰り」を与えることがプレゼンターの仕事
  • 聴講者を「擬似主役」に
  • 聴講者の喜び、笑顔を最終目標とする
  • 意図的にスライド無しのプレゼン・トークをイメージしながら、その中で「思わずホワイトボードに描きたくなるような図解」があれば、それをスライド化していけばよい
  • 「図解とは要約である」
  • スライドは「理念」を示す場であって「詳細情報」を示す場ではない
  • 喩え話上達法:なぞかけを毎日、一題やる。

特に今後強化したいと思っていた喩え話の準備のコツ。文字にすると当たり前のようだが、きっちりこの作業を行ってはいなかったと実感。

(A)説明対象の特徴を洗い出す
(B)聴講者が詳しい分野を考える
(C)説明対象の特徴(A)に似ているものを(B)の分野から探す

そして巻末に「プレゼン成功のためのチェックリスト」が見開き2頁にまとめられている。これに自分なりにのチェック項目を追加すればかなり実効的なチェックリストになるのではないだろうか。


今回のプレゼンの目標は「地味なテーマでも楽しんでもらう」であり、達成基準は「社長の笑顔」だった。途中何度か社長の笑いを誘ったので、目標は達成!
ただし、振り返ってみるに スライドに文字が多かったり、時間を気にして早口になったりとまだまだ「伝えたい=自分視点>与えたい=顧客視点」であったように思う。次にプレゼンをする際には「顧客視点」の徹底を意識して取り組んでみよう。


温かい気持ちで聞いてくれる人の前で何度もプレゼンにチャレンジし、自分の失敗の回避よりも聞いてくれる人の満足に焦点を当てるように意識すると、じわじわとプレゼンが苦手でなくなってくる。何度も温かく聞いてくれた朝カフェメンバーには大きな「ありがとう」を送りたい。

*1:小学校の頃は市内の音楽コンクールの舞台上で学校代表で学校紹介をするくらいで、しゃべりはそれほど苦手分野ではないような気がしていた。でも、やはり私のコアな部分は小心者で引っ込み思案なんだ。そう認識させられた出来事だった。