とある「ぐだぐだ法務」の2015年カレンダー

年々レベルが上がる「法務系Advent Calender」です。が、レベルに怯むことなく参加エントリーをすることにも意味があるのだと思います。そう、2015年の自分のテーマは“カッコ悪さを獲りにいく”なのです。
さて、法務という職種、「臨床法務」という言葉があるように、突然重病患者が運ばれてきた救急外来のよう状態を呈することもないでしょうか。年間の計画をあれこれと立ててみたものの、その多くをすっ飛ばすほどの事案に遭遇することもあります。私自身、自分のキャパシティを超えることのオンパレードでしたのでこの1年間は本当に行き当たりばったりでした。そんな2015年を(公開しても支障のない範囲で)オープンにしてみようと思います。ぐだぐだだった・・・と落ち込むよりも、ぐだぐだを振り返ればそこに何か発見があるのではないかと自己正当化してキーボードを叩いてみます。

1月

12月末の会社忘年会で言われた言葉で俄然やる気を得、例年にも増して前がかりな気分でした。「朝、インプットorアウトプットする。最悪5分でもよいので毎朝続けること」「毎月1本のエントリを」などといっておきながら、12月の今、振り返ってみるとどれも実現できず。
娘も3歳になるので勉強時間をとれるだろうと思いきや、“娘が大きくなる=自分も年齢を重ねる。”ということなので、今まで以上に無理が利かないことを想定すべきでした。1月は仕事初めのその日からインフルエンザで1週間休むことになりました。1月の体調不良を示す、自分のつぶやき。

長女が冬休みの思い出を描いた絵を持ち帰ってきた。…家族全員次々に体調不良で倒れた冬休みの我が家。「インフルエンザで寝込むママと宿題をする私」だった。

そして仕事面において2015年の始まりは、前年から継続している紛争事案対応からです。

2月

2015年は諸般の事情からコンプライアンスについて形式も実質も立て直しを図る必要性に迫られたため、形骸化していたコンプライアンスリスクマップの見直しに着手します。“標準的なリスク対処ができていないもの”をターゲットに、これまで避けてきたカテゴリに気合を入れて取組むことに。まずは「セキュリティリスクの見直し」に着手し、関連法令を一から整理したり、情報種別ごとに“情報の一生”というフローを作ってみたりして、情報システム部門を巻き込んで試行錯誤の始まりです。
この間にも、紛争対応はさらに進みます。紛争は「攻め」なのか「守り」なのかでそのアクションは大きく異なると思うのですが、同時に発生すると頭の中も手作業もぐちゃぐちゃに。

3月

紛争対応×コンプラ見直しを進めている中、法務とはまったく関係のないセミナーに参加し、年初の気合い以上のやる気を獲得します。U理論や成功の循環モデルといった内容に関連するセミナーといえるのでしょうが、人生を考え直す時間となりたっぷりエネルギーを充填できた3月です。セミナーでの“正義の反対は「正義悪」ではなく「相手の正義」だ”という言葉がずっとひっかかり、“法務って正義を扱う仕事なんだろうか・・・”などとぐるぐる考える中で“コンプライアンスの正体は「愛」である”なんてよくわからない確信を得たりしました。

4月

世の中は新年度。仕事でも色々新局面を迎えたり、大きなヤマが佳境に入ったり。4月〜6月は大き目のヤマを複数抱えている中、いつどんな矢が飛んでくるかわからず、しかも飛んできたときには緊急対応なので常にピリピリしていました。
これまで私が担当していた研修や複雑なビジネス案件を若手メンバーたちに任せるほかない状態だったのですが、振り返るとこれは非常によかったのかなと思います。ほぼ日に「現実を受け止めるというのは何か重いものを背負うのではなく、手放す感覚だ」といった趣旨の言葉があったのですが、まさにそんな感じです。勇気をもって手放すことで得られるものがあったんだと、このエントリを書きながらあらためて実感しております。

5月

継続しているヤマの影響で、出張が多くなり始める頃です。新幹線が開通し、さくっと東京に行けるようになったために、さくっと東京出張が組まれます。日々はドタバタ対応し、出張日の移動時間に企画諸々考えるという習慣がつき始めました。

6月

大ヤマ×3が相変わらず平行して進みます。そしてこの頃、「今年は契約相談が多いな・・・。」というぼんやりとした印象が確信に変わります。この頃から案件分析のためのExcel情報入力がまったくままならなくなるほど、さばくことに必死になってきました。ビジネスが複雑化し登場人物が増えるため、比例して契約の本数が増加します。このビジネスの多様化・複雑化に伴い、これまではあまり意識しなくても問題がなかった独禁法の様々な規制を意識せざるを得なくなりました。2015年のコンプライアンスの次のターゲットは独禁法リスクと確定することに。

7月

今年ドタバタした一番の理由。ナナメ上の上司の異動に伴い、法務だけでなく人事業務の一部も担当することになりました。守備範囲の拡大が今後の課題となるであろうことは意識していたつもりですが、拡大は総務・コーポレート法務方向かと思っておりました。が、「組織」は常に動くもの。欠けたところを誰かが埋めなければならないとき、既存の担当業務との親和性は問われないものですね。小さな法務のキャリアパスとしては管理部門のその他の分野も管掌することは必然です。そのことを漠然とイメージはしていたものの、時期も方向も想像外でした。
人事業務の一部を扱うようになり、私自身がこれまでビジネスという「コト」ばかりを扱ってきたのだと痛感しました。“新規ビジネスのために事業部に足を運ぶ”から、“ビジネスの話を口実に人に会う”という回数が増えてきました。これまでどれだけ“人”を見てこなかったんだろうと思う機会に何度も何度も遭遇しました。ビジネスを成立させるもの、結局は人なのに。
法務業務では、案件対応はメンバーに任せ、個人的には時間を作って独禁法にこってり取り組みます。強制的に発表の機会を作り、社外勉強会で発表もしましたが、取組めば取組むほど闇の中に潜っていく感じで、当時“独禁法は毒飲法だ”なんてつぶやいてました。

8月

法務と関係のない社内イベントとの企画に走り回ります。小さなチームとしての法務をマネジメントするだけでも四苦八苦なのに、多くの運営スタッフを束ねなくてはならず、結局うまくとりまわせないマネジメントを自分自身が作業することで補うという、非常に浅はかなマネジメントに終わりました。お盆のお休みは、イベントの作業に追われ、久々に徹夜もしました。・・・お肌に悪い日々。でも、法務以外のつながりを作ること、遠回りでも法務業務にも役立つはずだと思うんですよね。

9月

コーポレート法務系の業務をヘルプする月間です。9月は記憶も記録も薄い。。

10月

法務でも人事でも出張が続いて、普段車移動の私は足の裏の皮がベロッとむけました(半分は空手の稽古のせいです)。

11月

人事系のあれやこれやに奔走します。法務と人事、使う発想がやはり違うと思うのですが、学生の時間割のように切り替わるものではなく、法務の緊急相談(「夕方出稿なんですけど、景表法問題ないですか?」)の直後に、フロアでは話せないセンシティブな人事相談が舞い込んだり。なれない人事系の判断だけでなく、法務業務の判断のキレが悪くなり、悪循環の中にいる自分を認識しながらも打開できないモヤモヤに包まれていました。そんなとき、Msutさんの「切り替えの『キレ』を読み、「あるある!」と心の中で大きく叫びました。

12月

はっ!と気づくともう師走。「法務系Advent Calendar」の季節で年末を感じます。


こんなドタバタの1年間でしたが、大きく2つの要因がありました。一つ目は予想外の危機、すなわち外部からの脅威に対する見積もりが甘かった。市場の変化スピードが上がるにつれ、外部からの脅威も増えていくことに無頓着であったと深く反省です。2つ目は自分のキャリアに対する見通しが甘かった。管理職見習いを数年経験した後に管理職になれたら隣接業務から少しずつ業務範囲を広げていく…なんてストレートに進むものではないと実感しました。そして、プライベートでは、小学校のPTA役員をついに引き受けたり、3歳の次女のクループ性の酷い咳のためにずっと抱っこして看病する日々が続いたり、さらにそんな中でも朝RUNや空手を始めたり。



振り返れば本当にぐだぐだ過ぎる1年でした。が、ぐだぐだの中でしか得られない、自分自身に対する強烈な不甲斐ない思いやかっこ悪さを痛感できたことは、年初に立てた目標を違う形で実現できたようにも思います。また、私がぐだぐだだと、メンバーが成長します。事業部門の管理職から法務メンバーに対するお褒めをいただく機会も増え、この点は本当によかったと思っています。
法務にこってり関わることのできる時間が減ってしまったことが悔しくもあり寂しくもあるところですが、2016年は“予想以上に、予想外のことが起きるはずだ”と肝に銘じて、肩肘張りすぎずに、さらに不格好に過ごしたいと思う、12月なのでした。
ぐだぐだな1年を締めくくるに相応しい(?)、ぐだぐだエントリでありました。

抽象と具体と。

先日のセミナー受講依頼、いくつか気をつけていることの一つに「思考停止」に陥らないようにすること。うーん、というよりは、自分が思考停止しているなと気づけるようになっておこうということ。

思考停止。その解釈は色々あると思いますが、「物事を考える次元が変わらないこと。言い換えれば抽象と具体を行き来しないこと。」という説明がいたく腹落ちしました。法務業務の中でよく「ひいて考えてみよう。」「俯瞰してみよう。」などと声をかけることが多いのですが、今ひとつしっくりこず。



「誰の、何のためのビジネスだっけ?」
「この製品を手にしたときにどういう感情をもってほしいんだろう?」
「そのために今回優先するものはスピード?確実性?」
という抽象的な問いと
「ユーザーがこのサービス始めるときにこのボタンを迷わず押せる導線になってる?」
という具体的な問いを行き来しながら解決策に近づいていくことが必要なのだろうとなんとなく思っているこの頃です。


先日の新入社員向けの研修において何を伝えようかという議論の中で、「自ら考えられる人材であってほしい」なんて意見も出されたのですが、おそらく法務に丸投げをする依頼者もきっと考えている。いかに早く、多く、売上をあげるのか。それを「考えていない」と評価することはよろしくないのかなと。自分のフィールドについては一生懸命考えている依頼者に対し、依頼者自身の抽象度・具体性の枠外にある、抽象度の高い問いを投げかけられるか、とことん具体性を突き詰めた問いを投げかけられるかが法務の腕なのだろうとふと思ったのでありました。


そんな、徒然なる本日のツブヤキでした。

電脳メガネ

最近、比較的外部研修に参加させてもらっているのですが、先月、法務とはまったく関係のない研修に参加してきました。
う〜ん、なんというのでしょう。啓発セミナーでもなく、スキルアップセミナーでもなく。でも確実に社会人経験15年の中でもっとも刺激的でためになったセミナーでした。知人にこれは是非勧めたい!と思っても、うまい表現がみつからない。「騙されたと思って、行ってみない?」としか言いようがなく。

組織改革や人材育成をテーマとしていたのですが、参加者の中で法務はひとりで経営者や総務・人事の方がほとんどでした。「法務の方でこのような研修に参加されるのも珍しいですね。」なんて言われたのですが、ビジネススキームや契約っていかに主体的に考え抜くか、本質を考え抜くかがキモであり、誰のためにどんな価値を提供するのかを考え抜くステップがないと表面だけをなぞって思わぬ落とし穴がある気がしておりまして。いつまでたっても、法務がリスクの視点を指摘し事業部が対処するというフローから抜け出せないのではないかと。このところ、法務のスキルアップでは変えられない、本質的なところに切り込まないとな・・・とモヤモヤしていたのであります。


で、たくさんヒントをもらいつつ、さらなる悩みも得た2日間になりました。自分の「在り方」を見直す契機となり、常に頭上にイメージできるような新しい視点を入手したので、これまでとは見える世界が違っています。メガネの度がぴったりあった感覚というか。ちょっと違うかもしれませんが、「電脳メガネ」をかけたらこんな感じ?というような*1。抱えきれないくらいチャージできた感じですが、講師に言われたように、いつか自分がパワーを与える側になれるようにと意識していこうかと。




かなり心に刺さった時間になったので、忘れないように自分用につぶやいておきます。

*1:電脳コイル」のアレです。ちょっとどころかかなり違うか。。

4月はコンプライアンス。

4月。オフィスにもピカピカの新入社員が仲間入りする季節。彼らとの最初の接点が「コンプライアンス研修」という法務の方も多いのではないかと思います。今年はコンプライアンス研修をチームメンバーの若手2人に任せることとしましたが、その際にこれまでどんな研修を行ったのかをふりかえってみました。

○初期:カタイ講座型
担当の取締役が行動憲章や行動規範を解説したり、1項目ずつ輪読したりということを行いました。この頃は「重さ」や「形式」を重視していたように思います。


○中期:講座+ワークショップ型
社会人になって初めて必要となる基礎知識のプチ講座と契約ゲーム・新ビジネスゲームなど行いました。チームに分かれて買主・売主双方の契約条件を提示しあったり、業界の“やっちゃった”事例をベースに、対応策を考えてもらったり。法令や契約の知識があると安心だよね、考えると答えにつながるヒントは誰でも見つけられるよね、そうなるとリスクが減らせるよね、ということをプチ体験してもらうプログラムにしました。少しでも「実益」があることと、法務への障壁を排除したいという思いがあり、このときは意識的に「コンプライアンス」「法令遵守」という硬い言葉を避けていました。


○現在:知識は不要?で検討中
中期の知識+ワークショップという形式を行ってみて、「知識」部分は新入社員のうちはほとんど活用できていないという事実を踏まえ、知識は新人研修プログラムではなく、業務に必要なタイミングで部署ごとに個別に抑えていく方がよいのではないかという考えに至りました。
で、約1ヶ月の集合研修の中、研修、研修、講座、講座…と続く彼らの頭の片隅やココロのどこかに研修のキーワードや法務スタッフの顔がちらっとでも残ればよいのではという方向で一度トライしてみることに。
以下の2点を狙いとしました。
・法務とのつながりをつくる。
・「これからこの会社でどうありたいか(≠何をしたいか)」を考え、その思いを形に残す。

法務としてはどうあってほしいのかについては法務の若手メンバー自身にじっくり考えてもらい、そのキーワードを伝える予定です。コンプライアンス研修のもうひとつの狙いは法務メンバー自身に心の底から真剣に自分自身がどうありたいかを考え抜いてもらうこともあったりします。新入社員と近い年齢の若手スタッフだからこそ、新入社員のココロに響かせることができるのではないかと期待しております。
とはいえ、最後に私から新社会人だからこそのリスクとしてのSNSの活用について研修のオマケ的に具体例として簡単に触れ、コンプライアンスに対する思いも伝えて締める予定です。


諸々あって、最近ずっと「コンプライアンス」の正体なるものを追いかけていました。これまでの研修では、コンプライアンスの定義として「法令遵守」「ステークホルダーの期待に応えること」などなど説明していたのですが、説明しながらずっと違和感を抱えていました。最近の実体験から、コンプライアンスは硬いものでも冷たいものでもなく、やわらかく熱いもののような気がします。ひとつの答えが「各自の心の奥にある正義感」なんて感じかなと思ったのですが、実は定義する必要はなく、考え続けること、答えを探し続けることこそが「コンプライアンス」に一番必要なのではないかと思っているこの頃です。

研修に即効性があるものではないのでしょうが、彼らの身を守り、そしてこれからの社会人生活を安心してドライブできるように、シートベルトのような存在になりたいなと。さて、うまく伝えられるかな。

あけましておめでとうございます。

2015年があけました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
2014年はブログを放置していたというのに、元旦からブログ更新とは。例年ならば夫の実家にておせちを食べ始める時間ですが、帰省直前に長女が発熱→長蛇の夜間外来を受診という大晦日を過ごし、現在家族は布団の中です。こんなお正月も滅多にないだろうと、元旦ブログを書いてみました。

元旦エントリはやはり新年の抱負が定番ですよね。例年、11月くらいから年初の目標の到達度や反省を踏まえ、なんとなく翌年のテーマを決めるのですが、2014年の1年間を表しているかのように仕事納めのその日までまったく余裕がありませんでした。

2014年のテーマは「き」でした。「きく」「きめる」。2013年に社外の女性リーダー研修を継続的に受講し、自分に最も足りない要素は傾聴力と判断力だと痛感し、とにかく「き」を意識しようと臨みました。そしてマネージャー見習いになったところでオペレーションをメンバーに積極的に委譲する必要が生じ、メンバー育成のための基本的発想として「きたいする」を追加したのでありました。



さて、あけて2015年。2014年は新しいことに借り出され、多くの方にたくさんの刺激をいただきました。この2年ほど法務から少し離れて視座を高くせよと上司から言われ続け五里霧中だったのですが、少しばかり霧の濃度が薄くなった下半期でした。その影響か、例年以上にフツフツとやる気が湧き続けている年末年始です。
まだワンフレーズがうまくはまっていない状態ではありますが、今年のテーマの仮置きとしては「失敗志向」です。自分の人生を振り返ると、取り繕うことばかり。そこそこの努力でそこそこのカタチを整えることばかりの数十年だったように思えます。そこで、これからの10年は「カッコワルイ」という成果を得ようと。そのためにはまったく新しいことへのチャレンジが必須。で、チャレンジしたことに満足するのではなく、その結果の悪さまで引き受けるつもりでいようかと。

子供たちにも母親のかっこ悪さを目に焼き付けてもらおうと思います。失敗しないように取り繕うことではなく、失敗してもまたトライする姿を見せられるように。試験に落ちることも、試合で負けることも、上司にがっかりされることも、メンバーに謝ることも。



2015年はブログでの毎月アウトプットを目指します。TOEIC、100点upを目指します。メンバーの成長をコミットします。経営をサポートするための具体的施策を実行します。
そして、夫や娘ーズと楽しく笑いながら失敗を讃え合って過ごす1年にしたいと思います。

*1

*1:元旦のノリで書いたエントリは青臭くて、抽象的になるものだと発見。これが今年のカッコワルイ第一号。

法務マネージャーのお仕事って。

法務系Advent Calendarが始まり、11日目です。毎日皆さんのエントリを読みながら、かなり早い時期に「しまった。レベルが高すぎる・・・。」と感じたCaracalです。が、おそらく広く多様性に富んだ法務パーソンに参加してもらうことも狙いの一つではないかと勝手に解釈し、来年のAdvent Calendarへの参加ハードルをぐっと下げようと、当ブログのいつも通りのつぶやき的エントリを登録いたします。
さて、2014年はブログを放置していました。今年は本当に、息が切れました・・・。ここには書くことのできない業務上のあれこれが多々あったのですが、原因の一つは自身の立場が変化したことにもあります。今年の途中からマネージャー見習い的立場になりました。足を踏み入れたばかりの法務マネージャーとしてのお仕事、目下の一番の悩みでもありますので、今感じていることを徒然なるままに。


見習い的立場であり、かつ「学びは自分で」の社風ですので、「さあ、君は今日からこの役割だよ!」と言われることもなく、日々手探りで進めています。役割は大きく 1)目標の策定および実行管理、2)具体的案件の判断(決裁)、3)メンバーの評価と育成、4)予算管理、5)その他諸々といったところに分かれるのかなと思い、それぞれについてこの数ヶ月の感じたところを。

目標の策定および実行管理

(1) 足元の課題の管理
一人法務として活動を始めたときから、一定期間ごとに処理した案件の傾向と分析を行い、次の期中における重点取組事項を抽出しています。Googleスプレッドシートで、1次担当、2次担当、相談類型(スキーム相談/契約相談/法令相談/係争/その他)、相談概要、改善事項およびその優先度と着手状況を案件ごとにまとめています。改善事項は多数の案件をさばく中で熱いうちに類似案件に備えての予防策等をごく簡単にメモしておき、「急がないけど大切なコト」を可視化し、一定期間ごとにTaskへの格上げを判断するようにしています。
(2) 周辺環境における課題管理
近いうちに予定されている法改正、他社における不祥事例等の情報を収集し、自社事業との関係度、優先度から次期課題に反映させています。
(3) 自社の将来の事業領域
近未来への備えとして、自社が進むべき領域の法制度や新スキームの提案などを提案していく必要があると、この数ヶ月で初めて実感として持ちました。
以前に「ビジネス法務」に掲載されていた記事(後ほど追記します→ビジネス法務2013年12月号 P.18「法務部の存在意義を高める年間計画」)において(3)の視点*1を得たものの、その実現にはなかなか至っていませんでしたが、管理職会議に参加するようになって初めてイメージが湧きました。開発部門の、営業部門の、購買部門の、それぞれの方針・施策を直接、時間をかけて聞くことにより、会議中にリアルタイムに法務業務に引き寄せて自分のキーワードに変換することができ、かつ細部のニュアンスを掴むことができるため具体的なアンテナを立てやすくなりました。上司経由で文字として知るそれとの温度差はかなり大きいものです。

具体的各案件の判断(決裁)

後述しますが、立場が変わるとこれまでの「法務本業」以外に多くの時間を割かねばならないことになり、担当はほぼメンバーに任せポイントの判断のみとなりました。かつ、メンバーが担当した契約レビュー等の判断にかけることのできる時間はぐっと減ります。以前は2次チェックに多くの時間を割き、案件ごとに1次レビュー評価タイムを適宜とっていましたが、短時間で判断を行うために毎朝案件確認mtg.を行い、そこですべて集中判断することになりました。以前から判断の質とスピードの向上を意識してはいましたが、意識ではなく環境から否応なく変えざるを得なくなったという結果です。その結果、これまでは「80点」くらいだったメンバーに求める点数を「60点」にすることにしました。ただ、「60点」と腹を括ってからの方が、メンバーの1次回答の質が上がりました。「任せる」は大きな肥料だと感じるこの頃です。

メンバーの評価・育成

育てる。最も大切であるとわかりつつ、非常に難しいテーマです。ただ、自身の子育て経験からも、そしてある日のTwitter上での皆さまのツイートからも「育てる」という育成者側視点ではなく、「『育ち』を支援する」という被育成者視点での発想がしっくりきています。一人法務からスタートし、法務業務については被育成側に立ったことのない自分自身のスキル全体に懐疑的となると、自分のスキルアップやインプットに目が行きがちです。ただ、管理者としては複数メンバーの伸び幅を増やしチームパワーの総量を上げることが役割ですので、2015年から以下を具体的に実践予定。
(1)スキルカルテ
ハード(法的知識、案件処理能力:契約レビュースキル、ドラフティングスキル、自社事業知識等)およびソフト(依頼者への接客方法、 ヒヤリング能力、ファシリテーション能力、提案実行力等)の両面から、半期ごとにフィードバック。「タイムリーにほめる」とともに、これによりステップアップしている実感を持ってもらえないかと。各社の皆さんはこのあたりきちっと管理されているものなのでしょうか?と投げかけたりしてみます。
(2) 「場」の提供
基礎知識のインプットを増やすための「場」、他社スタッフと切磋琢磨するための「場」。地方企業であるが故のハンデを少しでも埋める環境を提供したいなと。地元法務知財系勉強会にて他社法務スタッフとの交流機会は設定していますが、横連携をさらに強化して基礎スキル共同習得の機会設定を進めてみよう。

予算管理

小規模法務ですので、それほど業務における予算管理のウェイトは大きくありません。研修費用、書籍費用、そして弁護士報酬など。報酬の見積は期初の段階で期中係争対応費用の見込みを立てることが難しいという点が悩ましいですが、ある程度の根拠の基にえいやっと立てるほかなく。

その他諸々

ハブ機能

経営と現場をつなぐ。部署と部署をつなぐ。メンバーと他部署をつなぐ。全社管理職会議に参加するようになってこの「つなぐ」機能のウェイトが案外高いのだと感じました。特に地方企業である当社の場合、東京を中心とした営業拠点と本社が離れていることから、営業起点の案件を進める際に「契約」というツールを通して案件全体のハブになることが主要な機能のひとつになりつつあります。管理職研修等で距離的制約が縮んだときに各営業所長との接点を持つことによってこの機能はより強化されたのではないかと勝手に感じています。
また、私の場合には一人法務から始まったため自分で切り込むしかないという背景があったのですが、真面目な法務スタッフは他部署のエライ人に気軽に聞くということに二の足を踏むことも多々あるようです。管理職会議・研修で距離が縮んだ他部署のエライ人やキーパーソンにつなぐこともこの数ヶ月で一段と増えたように思います。

非・法務機能

大企業の場合は法務として独立した組織だと思いますが、管理部門の中の法務という企業もまだ多いのではないかと思います。私自身の場合、法務業務だけではなく、立場が変わったことにより総務・人事に、経営企画に関することなども少しずつ求められることになりました。また、これまでの取引法務だけでなくコーポレート法務も少しばかりかじることになったり。ああぁ、本業が〜と思うこともありましたが、全社の教育制度を考えることによりコンプライアンス研修のプラットフォーム構築に活かすことができるなど、相互作用を働かせることはできるかなと感じています。




雑然とこの数ヶ月を振り返ってみましたが、以前は法務起点で上を向いて法務として何か経営に貢献できることは…という発想でしたが、経営情報に触れることにより経営課題を法務機能を用いて解決できないか…と天井から穴を開けて覗き込むイメージに変わりました。このイメージを日々のアクションに変換して実践することが2015年の課題です。
あぁ、本当に徒然なるエントリでした(毎度)。「法務マネージャーのお仕事って。」に続く今の自分の言葉は「諸々あるけれど、面白い。」です。今後、その怖さも色々経験するのかもしれません。いつか法務マネージャーの諸先輩方のお話を直接お伺いしたいものです。


2014/12/12 記事について追記しました。

*1:同記事P.21「当社の事業モデルの広がりを把握し、先取りして法的テーマを洗い出すためのアプローチ」に触れてから、このアプローチを常に意識しています。

法務のやるせなさ?

2014年、あまりに更新をさぼりがちだったので、さすがにそろそろ更新しようかとちょっとブログ整理していたら、upしていないエントリがちらほら。今さらなぁとも思いますが、元々プチ法務のひとりごとブログなので、こそっとあげておきましょう。



==以下は2013年の秋頃に考えていたらしい。==



先日のなんちゃってLT後の懇親会にて、法務のやるせなさ(?)が話題にのぼりました。アドバイスしてもどうせ聞いてもらえない。「法務の言うこと聞いてたら、商売にならんわ!」って言われることもある一方、都合よく「法務承認済み」を求められたり。法務ってやるせないよなぁ。


むむむ、確かに。


でも、ふと自分の場合、最近はあまりそうも思わなくなったと感じました。もちろん、「法務承認済み」だけを狙っている相談や、まったくの丸投げも皆無とはいえないですし、そのときはチームメンバーにもわかるくらい(←おいおい。)ムキーっとなっているのでしょうが、その頻度はさほど高くないように思います。ただ、真にビジネスのために法務に相談しようっていう感じかというとその域には達していない。ビジネススタート後にトラブったら嫌だから、先に聞いておこうっていうくらい。


勉強会の他社のメンバーも皆、真摯に業務に向き合っています。スキルは私よりもずっと高い。で、差は何だろうかと考えて、出てきた仮説は2つ。

(1) コンプライアンスと法務が明確に分かれている組織。
以前は法務でコンプライアンス委員会も担当していたのですが、数年前に分離しました。そのときは色々と思うところもあったのですが、今となってはこの方がやりやすいです。ビジネスを推進したいという思いと、止めるアクションが自分の中で相反します。もちろん、スキームの構築時にはいかに市場ルールに反せずにビジネスを始めるかに頭を悩ませますが、それはあくまでもビジネス推進のため。職員室より進路指導室的でありたいときには、コンプラというマジックワードは他部署に背負ってもらった方が進めやすいと感じています。

(2) 新製品・新ビジネスに次々と手を出す社風。
日々、新しい商品が!というほどではないのですが、でもそれなりに新しいものを採用しようという気風があります。同じカテゴリの最先端をというよりは、ちょっと外れてみようかという傾向にあるので法務が検討すべきスキームも法令もちょっとずつ変化します。この「変化」というとは思っているよりも大切で、飽きている余裕がなくなります。その分、基礎的なところが落ちてしまうのは大きな反省材料ですが。。

あとは…私の能天気な性格。一見、そうは見えないようなのですが寝たら忘れるタイプです。*1ムキーっとなっても翌朝には忘れるのでやるせなさを持ち越すことはほぼありません。


でも、形式的承認を求められるばかりでは存在意義はないですよね。これからは、法務に世間話をしに行けば、目からウロコなスキーム提案をしてくれる、そんな法務になりたいものです。そういう観点では、「保健室法務」からはそろそろ脱却の時期なのかとも感じるのでありました。

*1:娘にも、「ママは怒っても朝になったら普通だから、大丈夫。」と言われてます。夜にどれだけキーっと怒っても、朝は前日の出来事を忘れて「おはよーん。」と言うらしいので、叱られてもあまり凹まないらしい。それはそれで、いいんだろうか…^_^;